「徹底的に調査を」 強制不妊訴訟の原告夫婦、差別のない社会訴え
「私と同じ手術を受けて声を上げられない人がいる。都道府県は徹底的に調査して被害を掘り起こしてほしい」。旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強いられ、国賠訴訟原告だった名古屋市の尾上敬子さん(75)、一孝さん(78)夫妻が11月に文京区で開かれた「共生のための文京地域支援フォーラム」で当時の状況を語り、差別のない社会の実現を訴えた。
2人は聴覚障害がありろう学校の同窓生。当時のろう学校は手話が禁止され、厳しい口話教育を受けた。75年に結婚したが、家族から「赤ちゃんを産んではだめ」と猛反対された。
一孝さんは、「聞こえない赤ちゃんが生まれたらどうやって育てるのか、聞こえる赤ちゃんならどうやってコミュニケーションするのかと言われ、子供を持つ夢が壊された」。夫妻と双方の母親で会った時も、母親同士が手話を使わずに話を進め理解できなかった。
敬子さんは母から「子供ができたら(今後は)世話をしない」と言われ、「援助がなければ生活できない。相談する相手もなく、手話通訳もいなかったので仕方がなく、親が言う通りに手術した」と悔しそうに語った。
昨年7月の最高裁判決は、優生保護法を違憲と断じた。一孝さんは「優生保護法のことは知らなかったので、ずっと母を恨んできた。母に謝りたい」。敬子さんは「障害者も同じ人間。優生思想を断つために学んでほしい。口をつぐんでいる被害者がたくさんいる。しっかり調査してほしい」と手話で訴えた。
国賠訴訟弁護団の松田崚弁護士(35)も判決の意義などについて講演。松田さんも聴覚障害があり「生まれた時、まだ優生保護法があり、もし親が不妊手術を受けていたら、私は生まれていなかった」との問題意識から弁護団に加わった。「差別のない社会をつくることは国はもちろん、社会全体の責任。聞こえる人も聞こえない人も一緒に学び合い、活動していけたら」と締めくくった。【上東麻子】
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