八代亜紀さん最後の舞台地、埼玉・熊谷で回顧展 絵画や衣装一堂に

2025/12/13 12:45 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 しっとりと胸に染みる歌声と、キャンバスに向き合う静かなまなざし――。二つの顔を持った歌手、八代亜紀さん(2023年12月30日死去)の歩みをたどる回顧展「生きる~ありがとう…これからも」が11日、埼玉県熊谷市仲町の八木橋百貨店で始まった。「雨の慕情」「舟唄」など数々の名曲で愛された一方、画家としても活躍した八代さん。約70点の絵画をはじめ衣装、トロフィーから“演歌の女王”の素顔が浮かび上がる。【隈元浩彦】

 八代さん、そしてファンにとって、熊谷は特別な地として知られる。23年9月9日、市文化創造館さくらめいとで、ジャズトランぺッターの日野皓正(てるまさ)さんのコンサートにゲスト出演したのが生前最後の舞台となったからだ。「歌手としてのピリオドを迎えた地での回顧展。三回忌を前に感慨深い」と話すのは、長年、八代さんに仕え、絵のマネジメントを任されてきた茂木崇幸さん。「作品の一つ一つに心が込められている。多くの人に触れてもらいたい」

 会場入り口で来場者を迎えるのは八代さんの直筆ノート。「永遠にって事は今この時を大事に生きることね」などとつづられている。亡くなる数年前に書かれたもので「生きる」と題した詩の一節。回顧展タイトルの由来だが、その後の運命を思うと悲しい。

 八木橋の担当、宮地豊さんのお勧めは別荘のアトリエを再現したコーナーだ。バックには写実的な自画像とともにサイン色紙が。最後のステージで、さくらめいとに寄せたもの。同公演翌日に入院したことを思えば、恐らく生前最後のサインであろう。

 茂木さんがとっておきの秘話を教えてくれた。「八代は演歌の女王と呼ばれましたが、美空ひばりさんの公認なんです。『私は歌謡界の女王だから』と言ったというオチがつくんですが」。苦笑しながらも、喪失感が拭いきれないような表情を浮かべた。

 同展は16日まで。入場料1000円(高校生以下無料)。問い合わせは同百貨店(048・523・1111)。

毎日新聞

社会

社会一覧>