秋田でクマとの事故急増 県警「衝突時はまず身の安全確保を」
ツキノワグマが大量出没した今年、クマと車や列車との衝突事故が急増していたことが秋田県警の調べで分かった。県警は「事故直後にもまだクマが現場付近にいる可能性があり、衝突した際にはまず身の安全確保に努めてほしい」と呼びかけている。
県警交通企画課によると、2020年以降の車の事故(衝突や接触を回避したことによる自損事故)は20年が26件、21年が34件、22年が13件で、大量出没して人身被害が目立った23年は101件、24年は大きく減って23件だった。25年は11月末までに137件が確認され、近年で最多となった。
今年起きた137件の月別の発生件数は10月が66件で最も多く、11月19件▽9月16件▽8月12件――などと続き、秋の発生が目立った。また109件は国道や県道などの一般道で、28件は自動車専用道路を含む高速道での事故だった。これまでは山間部の高速道など限られた場所での事故が多かったが、今年は市街地での事故が増えたという。
一方、けが人の報告はなく、クマも衝突で死ぬことはまれで、ほとんどがその場から立ち去っている。車のバンパーなどの破損が目立つという。
同課は「クマを避けようと急ハンドルを切るのは危険。また衝突してもすぐ車から降りず、路肩に車を移動するなどしてまずは身の安全を確認してほしい。特に高速道路の走行中に急に飛び出してくることがあるため、山間地ではスピードを落とすことが必要」としている。
JR東日本秋田支社によると、今年度のクマと列車の衝突事故は11月末までに51件確認され、過去最多だった2023年度(46件)を上回った。同支社は23年度から田沢湖線や奥羽線、羽越線などの沿線で忌避剤の散布などをしているが、「全線のカバーは難しく、効果は必ずしも100%とは言いがたい」としている。
◇企業間で「クマリスク」高まる
東京商工リサーチ秋田支店によると、12月に実施したアンケートで県内企業66社のうち29社(約44%)が、クマ出没によって業務に影響が「出ている」と回答。全国平均の6・56%、東北地区平均の28・93%を大きく上回ったことを明らかにした。
主に金融・保険業やサービス業、不動産業、情報通信業、小売業などが目立ち、「従業員への周知・啓蒙(けいもう)に迫られた」(12社)、「来客・受注が減った」(9社)、「被害防止のための投資が必要になった」(7社)、「予定していた訪問をとりやめた」(5社)「イベントを延期・中止した」(3社)、「拠点を閉鎖した(一時的含む)」(2社)などの影響があった。また「食害」や「出没時間への配慮が必要になった」という回答もあり、売り上げ減少やコスト増加に苦慮する企業が一定数浮き彫りになったとしている。
同社は「今年は『クマリスク』が高まり、企業は従業員の安全確保と事業の継続を同時に求められており、クマ被害は地域産業の継続性のリスクにも影響している」としている。【工藤哲】
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