「クマで危険」イメージ払拭 秋田県が“切り札”連れメディア説明会
秋田県が「知られざる新たな秋田の魅力」をPRして観光客や移住者の増加につなげようと、首都圏で初のメディア説明会「いぐどぉ~! 秋田」を開いた。なまはげと秋田犬という「切り札」も参加したイベントは、7月に新設された「マーケティング戦略室」が仕掛け、ネットメディアを中心に約30社が集まった。
4月の県知事選で16年ぶりに知事が交代し、当時49歳で県外出身の鈴木健太氏が就任した。鈴木氏は7月、観光振興・移住促進の取り組みを強化するため、企画振興部総合政策課内にマーケティング戦略室を設置。総務省の若手官僚、馬場俊行さん(27)を室長に招いた。
馬場さんは東京都出身。奈良県庁出向に続く2度目の地方勤務だったが、前任者もおらず前例踏襲とはいかないポジションに「驚いた」と明かす。一方で、民間のマーケティング手法を県庁に根付かせて施策の精度を高め、県民や観光客・移住者の満足度を高めるというミッション(使命)に「やりがいも感じた」という。
県のアンテナショップ「あきた美彩館」(東京都港区)で行った説明会で、馬場さんは自らマイクを握り、「県には多くの文化資源、郷土料理、温泉、雄大な自然がある」と熱弁した。
祭りなど重要無形民俗文化財の数は47都道府県で最も多い17件。特に日本三大盆踊りの一つである西馬音内(にしもない)盆踊り(羽後町)は「私も夏に訪ねましたが、幻想的で唯一無二の魅力がありました」と語った。
説明会では「クマの目撃情報は12月に入り、劇的に減少している」と強調した。県のツキノワグマ等情報マップシステム「クマダス」によると、県内全域での目撃情報は11月4日の287件をピークに減少傾向で、特に12月8日以降は1日当たり7~16件(16日現在)。過去5年間、県内で冬季(12月~翌年3月)の人身事故は無いことから「安心して観光をお楽しみいただけます」とした。
きりたんぽ鍋やいぶりがっこ、日本酒といった秋田自慢の郷土料理の試食もあった。県民のご飯のお供で、塩辛く漬け込まれた紅ザケ「ぼだっこ」も振る舞われた。
説明会に登壇した、食のあきた推進課主査の高橋里矢子さん(46)は、農業試験場勤務時代に新たなブランド米「サキホコレ」の開発に携わった。2022年秋に本格デビューしたばかりで「コシヒカリを超えようと作り、かむほどに広がる深い甘みが特徴」と宣伝していた。
森吉山の樹氷、横手のかまくらなど冬の魅力も紹介された。
説明会に参加したネットメディア「旅色」の深井雄太さん(39)は「世間では『秋田はクマで危険』と思われているので、この時期の開催はベスト。『冬の秋田は安心シーズン』という言葉はアピールになる」と評価した。一方で「情報が盛りだくさん過ぎたので、的を絞ったPRも今後は必要」と注文を付けた。
馬場さんは「手応えを感じた。反応を見て、いろいろ仕掛けていきたい」と意気込んでいた。【早川健人】
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