大川原化工機冤罪、捜査指揮の元警部ら再び不起訴 刑事責任は不問に
化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長らの起訴が取り消された冤罪(えんざい)事件の捜査を巡り、検察審査会が「不起訴不当」と議決した警視庁公安部の捜査員3人(当時)に対する虚偽有印公文書作成・同行使容疑について、東京地検は23日、再び不起訴処分とし、刑事告発に対する捜査を終結した。民事訴訟では違法捜査が認定されたが、刑事事件として個人の責任が問われることはなくなった。
大川原化工機側は①捜査を指揮した警部と部下の巡査部長が立件に不利な実験データを報告書から削除した疑い②元取締役の取り調べを担当した警部補が供述調書を過失で破棄したとする虚偽の報告書を作成した疑い――で刑事告発した。
地検の不起訴処分に対し、①を審査した東京第6検察審査会は9月、公安部の捜査を「立件ありき」と指摘し、虚偽の公文書が作成されたと認定。「ぜひ検察官の手で本件を司法の場で明らかにすることができるよう、改めて検討されたい」と処分の見直しを求めた。
また、②を審査した東京第4検察審査会は2月、「調書の破棄は過失」とした警部補作成の報告書の内容について「虚偽であると考える」と指摘し、再捜査を求めていた。
大川原化工機の社長ら3人は2020年3月に生物兵器に転用可能な装置を不正輸出したとして逮捕・起訴され、初公判直前の21年7月に起訴が取り消された。
民事訴訟では警視庁公安部の逮捕や東京地検の起訴を違法とし、東京都と国に計約1億6600万円の賠償を命じた東京高裁判決(25年5月)が6月に確定した。警視庁と最高検はそれぞれ検証報告書を公表し、幹部が大川原化工機側に謝罪した。【岩本桜】
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