アルコール依存症からの回復支え合う会 「予備軍」記者が訪ねた

2026/01/05 11:45 

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 アルコール依存症からの回復を目指す「アルコホーリクス・アノニマス(AA)」という団体がある。1935年に米国で生まれ、世界180カ国と地域に拡大。現在、日本でも600以上の自助グループが活動している。その中の一つ、「AA福岡グレイスグループ」のオープンミーティングが開かれると聞き、会場を訪ねてみた。

 AAは、誰もがアノニマス(匿名)で参加できるのが特徴だ。当事者らが自らの体験を告白し語り合うミーティングを中心に、12のステップから成る独自の回復プログラムに沿って「飲まない生き方」を目指している。

 記者が2025年12月中旬に訪ねた福岡県行橋市の会場には、依存症の当事者や家族、回復をサポートする医療関係者ら約30人が集まった。3人が過去の体験などについてスピーチ。その後は参加者全員が車座になって、現実に向き合うことの大切さや問題克服への希望を語り合った。

 体験を語ったうちの1人、40代の男性会社員が酒を飲み始めたのは18歳の時だった。「コミュニケーション能力が低い」と感じていた自分の性格を補うために頼った。飲酒で得られる高揚感は、知らない人とも積極的に話をする力をくれた。

 大学を卒業して就職したが次第にコントロールがきかなくなった。依存症は自覚していたが「認めれば飲めなくなる」と隠した。やがて仕事に行く直前まで飲むようになった。30代後半で「もう仕事に来ないでください」と会社から通告。「社会的に抹殺された」と感じた。

 最終的に肝機能の働きを示すγGTPの数値は、正常とされる50の20倍近い約1000に。死をも覚悟したがそれでも飲み続けた。入院が決まったが「もう一生飲めないなら」と入院当日までひたすら飲み続けた。

 体の中から酒が抜けた時点が立ち直りのスタートライン。退院後、AAに毎日のように通った。「開き直って自分の弱さを周囲にさらけ出すことで心が楽になった」「共感できる仲間と出会って思いを分かち合うことで回復できた」と振り返る。酒を口にしない生活は来春で4年になる。

 記者がオープンミーティングを取材しようと思ったのは、直近のγGTPが160を超えている、毎日の晩酌が欠かせない「依存症予備軍」だからでもある。だが実際に依存症と闘う当事者の体験談は、そんな生半可な言葉では言い表せない壮絶なものばかりだった。

 しかしその一方で「自分の悪いところを隠すことなく話すことで、それまでは拒絶していた周りの人の言葉に耳を傾けるようになれた」と口々に語った。絶望の淵からはい上がり、生きる希望を見いだそうとしている人たちを救うためには、当事者を孤立させないための支え合いこそが重要だと感じた。

 福岡グレイスグループの北九州・筑豊地区のミーティングは次の3カ所で定期的に開かれており、「飲酒をやめたい」と思う人なら、家族を含め誰でも無料で参加できる。スケジュールと会場は次の通り。

 小倉地区=毎月第2、4土曜日午後3時。北九州市立男女共同参画センター・ムーブ(小倉北区大手町)▽田川地区=毎月第3日曜日午後2時。田川青少年文化ホール(田川市平松町)▽行橋地区=毎週木曜日午後7時。行橋市中央公民館(同市大橋)。問い合わせはAA九州・沖縄セントラルオフィス(099・248・0057)。【松本昌樹】

毎日新聞

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