安倍昭恵さん「被告は私の前で謝罪しなかった」 意見陳述書全文
安倍晋三元首相銃撃事件で、殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)に対し、奈良地裁は21日、求刑通り無期懲役を言い渡した。
安倍氏の妻昭恵さんは判決後、「被告は自分のしたことを正面から見つめ、かけがえのない家族である夫の命を奪い去った罪を償っていただきたい」とコメントした。
2025年12月の公判で、代理人弁護士が代読した昭恵さんの意見陳述の全文は以下の通り(西暦年の注記と小見出し以外は昭恵さん提供の陳述書の原文の通りです)。
◇昭恵さんの「心情等に関する意見陳述」
「日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ」、夫・安倍晋三の思いでした。
夫は、「国民が日本人であることに自然と自信がみなぎってくる、日本人として生まれたことに誇りを持てる、日本をそんな国にしたい」、「日本が世界でいろんな役割を果たしていく、世界の人たちが、そういう日本に尊敬の目を向ける、世界の中でしっかりと輝き、存在感のある日本を作っていきたい」と、その思いを語っていました。
「日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ」との思いを持って、内閣総理大臣通算在職日数3188日で、89回の外国訪問を敢行し、延べ196の国と地域を訪問させていただき、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を展開し、世界各国の首脳と交誼(こうぎ)を結んできました。
夫の死に対し、米国、オーストラリアなど複数の国が追悼決議をしてくださいました。
インド、ブラジルなど複数の国が政府による服喪をなさってくださいました。
複数の国や地域で公園などに夫の名を冠してくださったり、夫の銅像を建ててくださったりしました。
私たち家族あてには、世界各国の首脳らから1700件以上の弔意のメッセージをいただきました。
トランプ米国大統領からは、「彼は他の誰よりも団結力を持った人物だった。何より、彼は素晴らしい国、日本を愛し、大切にする人だった。安倍晋三氏は非常に惜しまれる。彼のような人は2度と現れないだろう!」というメッセージをいただきました。
先日お会いしたオーストラリアのアボット元首相からは、「衝撃的な暴力行為による安倍晋三氏の死により、オーストラリアは偉大な友人を失った。日本は戦後の最も重要な指導者を失った。安倍政権の元で、日本は西太平洋の主導的な民主主義国家としての重要な地位を獲得していた。」というメッセージをいただきました。
◇献花台にできた長い列
1700件以上の弔意のメッセージを改めてみると、1件1件のお言葉から、夫が日本と日本国民のために尽くしていたことを、皆様にご理解いただけていることが心に沁(し)みます。
夫の葬儀に際しては、増上寺での葬儀にも、武道館での国葬儀にも、本当に多くの方々にお参りしていただきました。
国葬儀には、218の国と地域・国際機関から約700名、国内外をあわせると4183人の方に参列していただきました。
武道館近くの九段坂公園に設置していただいた献花台の順番待ちの長い列が四谷駅まで2キロ以上続き、2万5889名の方に献花していただきました。
国内のあちこちで、いまだに、夫の写真を飾ってくださっていたり、多くの方が夫とのツーショット写真などを展示して夫との交流をお話してくださったりしているのを目にしたり、お聞きしたりしています。
この裁判が進む中で夫の生涯を振り返り、夫が日本国民、日本国のために、延(ひ)いては世界平和のために人生を捧(ささ)げていたことを、改めて認識しています。
◇拉致問題への思い
「政治家として絶対やらなければならない」と、夫がいつも言っていた大きな一つが、「拉致被害者の救出」でした。
夫と拉致被害者問題とのかかわりは秘書時代に遡(さかのぼ)ります。
父・安倍晋太郎の秘書をしていたとき、拉致被害者・有本恵子さんのお母様が何度か事務所に訪ねてこられました。
最初、夫は、「いくら独裁国家でも、そんなことを国ぐるみでするのだろうか」と半信半疑だったようです。
しかし、お母様たちの熱心なお話しを何度も聞くうちに、北朝鮮による拉致被害があることを確信しました。
そのころ、拉致の可能性を指摘しているマスコミはほんの一部でした。
夫は外務省などを回り、担当者と掛け合いましたが、木で鼻をくくったような対応を受けたようでした。
平成5年(1993年)、夫は、国会議員になると、拉致被害者問題の解決、拉致被害者の救出に向けて一人で行動を起こしました。
最初に賛同してくれた国会議員は数人であり、小さな行動でした。
しかし、その後、北朝鮮による拉致被害者の救出に向けた、いわゆる家族会や救う会、そして超党派の国会議員で作る拉致議連が立ち上がり、大きな行動となりました。
平成14年(2002年)、小泉総理大臣が北朝鮮を訪問する際、内閣官房副長官だった夫も小泉総理に同行して訪朝し、ついに北朝鮮に日本人の拉致を認めさせるに至りました。
その後も、拉致被害者の帰国を図り、一所懸命に被害者救出のために奔走しました。
◇夫婦2人で再起
第一次政権では潰瘍性大腸炎が急激に悪化し、任期半ばで退陣しましたが、平成21年(2009年)、アサコールという特効薬のおかげで奇跡的に病気がよくなると、夫は、「やり残したことがあるんだ」と言い、政治家としての再起にかけました。
「やり残したこと」のうち、その大きな一つは、間違いなく拉致被害者救出でした。
この問題は「総理大臣でないと解決できない」、「その地位に行かないとなしえない」と分かっていたからです。
再起を決意し、夫婦2人で、一から再出発する気持ちで、地元山口で小さな集会を何百と開き、何千人の方たちと膝を詰めてお話をしました。
そして、夫は、総理大臣に返り咲くと、トランプ米国大統領など各国首脳に、機会あるごとに拉致被害者の問題を訴えてきました。
夫は、拉致被害者の問題は、常に自分が解決しなければならない、と考えていました。
◇「政治は命がけ」
私は、夫の身が心配になって「あなたが、危険な目に遭ったらどうするの」と聞いたことがありました。
そのとき、夫は「政治は命がけでやるものだよ。その時は、とにかく立派なコメントを出してくれ」と答えました。
私は、夫の覚悟を改めて知り、胸が締め付けられる思いでしたが、そのときは「いやね。縁起でもない」と言い、笑ってその場をごまかしました。
本当にそんな日が来るとは、夢にも思いませんでした。
令和4年(2022年)7月8日朝、いつものように「いってらっしゃい」と夫を送り出しました。
夫は、いつものように、スーツの襟元に、拉致被害者救出の願いが込められたブルーリボンバッヂを着けて、大和西大寺駅前で選挙の街頭演説をしていました。
被告人の撃った銃弾は、そのブルーリボンバッヂを弾(はじ)き飛ばしました。
夫が政治家として成し遂げたかった悔いがあるとすれば、その一つは、間違いなく、銃弾に弾き飛ばされた拉致被害者とそのご家族への思いだったと思います。
でも、弾き飛ばされたブルーリボンバッヂは割れることはありませんでした。
拉致被害者の救出をするんだという、夫の強い意思の現れのように、割れずに私の元に戻ってきました。
◇突然の安倍氏の死
「再チャレンジができる社会」、そんな社会を夫は目指してきました。
平成28年(2016年)12月、再犯防止推進法が施行されました。
罪を犯した人が、その責任を自覚し、被害者の心情を理解すること、そして、自ら社会復帰のために努力することが再犯の防止に重要であり、社会で孤立せず、国民の理解と協力を得て再び社会を構成する一員となることを支援する法律です。
私も、元受刑者の社会復帰を支援する活動に参加させていただいたり、犯罪が起こらない社会をどう作るかという話し合いに参加させていただいたりしていました。
ところが、ある日、自分が犯罪の被害者遺族になりました。
突然の夫の死は衝撃的過ぎて、私は、頭の中が真っ白になり、かなり長い間、夢の中にいるようでした。
夫の母は、自宅で亡骸(なきがら)となった息子と対面しました。息子を失い、ふさぎ込むことが多くなり、昨年(2024年)2月4日に他界しました。
ついに、私は一人残されました。
◇「負の感情は持ちたくない」
行き交う家族連れなど、何気ない日常風景を見て、自然に涙が落ちることがあります。
夫のことを思うと涙が出て、自然の感情をとめることができません。
しかし、私は、夫の死がどれだけ悲しくとも、「憎しみだとか恨みだとか負の感情をなるべく持ちたくない」と思い、そのような感情が湧き出しそうになると、自分の感情を俯瞰し、そうならないようにしてきました。
先日、私は、被害者参加制度を利用して、この刑事裁判に出席しました。
夫の母の形見のスカーフを首に巻き、夫の心残りである拉致被害者救出の思いを込めたブルーリボンバッヂを襟元につけて出席させていただきました。
夫が、多くの皆様にお集まりいただいた参議院議員選挙の応援演説最中に銃撃されたものですから、候補者はじめとする関係者の皆様、お集まりいただいた多くの皆様も危険に晒(さら)された、ということが気になっていました。
奇跡的なのか狙い通りなのかはわかりませんが、とにかく、夫以外の皆様の体に弾丸が当たらなかったそうで、それは幸いでした。
裁判では、政治家・安倍晋三が銃殺された事件の審理がされています。
この事件については、マスコミをはじめ様々な人が様々なことを述べられていますが、実際に被告人がどんな態度で、どんな表情で、どんな気持ちで、私の夫を奪ったのか、私自身の目で、耳で、直接確認したいと思い、被害者参加制度を利用し、裁判に出席することにしました。
被告人が私の目の前で謝罪することはありませんでした。
裁判の休憩中、私は、控室で、家族である夫のことをお話しているうち、涙があふれ出ました。
たくさんの皆さんに、政治家・安倍晋三を失ったことを残念に思っていただいていますが、私にとっては、政治家・安倍晋三であるとともに、かけがえのないたった一人の家族です。
最後に言葉をかわすこともできず、突然夫を亡くした喪失感は一生消えることはありません。
◇遺志を紡いでいく
夫を亡くした喪失感の中、私は夫が亡くなった意味を考えました。
夫が、あのまま国会議員を続けていたら、それはそれで大変だったでしょうし、その功績を称(たた)えてくださる若者もここまで多くなかったかもしれない、でも、あの時、夫が亡くなったことによって、その志を継ぐ若い人たちが生まれています。
「我を哀(かな)しむは、我を知るにしかず 我を知るは、わが志を張りてこれを大にするに如(し)かざるなり」、夫が尊敬していた吉田松陰先生の言葉です。
そして、留魂録に、「後来の種子未(いま)だ絶へず」と、「志を受け継ぐ人がいれば、蒔(ま)いた種は絶えることなく実は育っていく」という意味の言葉があります。
夫の死を機に、若い人たちが、夫の遺志を継いで、この国のためになにかを成し遂げていってくれることが、夫が早くに亡くなった意味でもあるのだと考えています。
若い人たちが、夫の生涯を振り返り、その思いを受け継ぐプロジェクトを始めてくれました。
そして、お金はないので立派な記念館とかはできませんが、ネット上に立派なデジタルミュージアムを作ってくださいました。
いま、日本の中にも世界にも、夫の志を継ぎ、蒔いた種を実らせようとしてくれる若い人たちがいます。
私は、このような皆様と一緒に、前を向いて、夫の志を紡いでいきます。
被告人の方には、自分のしたことを正面から受け止め、罪をきちんと償うよう求めます。
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