被告、被害者家族の涙声に沈黙 「謝りきれない」 知床沈没事故公判
北海道・知床半島沖で2022年、観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没して乗客乗員全26人が死亡・行方不明となった事故を巡り、業務上過失致死罪に問われた運航会社「知床遊覧船」社長の桂田精一被告(62)に対する公判が4日、釧路地裁であった。この日は被害者家族6人が被告に質問し、怒りをにじませながら責任の所在などを追及し、被告は「申し訳ございません」と繰り返した。
事故で7歳の息子と元妻が被害に遭った男性は「子供は何人いるか」と問い、被告は「3人」と言い、男性が「自分より先に子が亡くなる事実をどう受け止めるか。想像したことはあるか」と涙ながらに訴えると、「失った者が戻らない喪失感」と力なく答えた。
長男の小柳宝大(みちお)さん(当時34歳)が行方不明になったままの父親(67)は、船体から見つかった宝大さんの緑色ジャンパーを着用し、写真をポケットに忍ばせて向き合った。「こっちを見て。このダウンは帰ってこない息子のリュックの中にあった」と語ると、被告は意外そうに驚いた表情をした。
父親が「あなたは『以前から海が荒れ、お客様が嘔吐(おうと)されながら引き返してほしいと言われる状況になったら引き返していた』と言っていた。引き返す判断を客任せにすることは責任の放棄では」と指摘し、被告は謝罪。父親は「これだけの被害を受けている。命がないんだ」と声を荒らげる場面もあった。
小柳さんの上司だった伊藤嘉通さん(同51歳)の弟は「被告からの(運航に関する)指示が違ったら、私たちの家族は生きていたと思わないか」と追及し、被告は「そうだったかもしれない」と答えるしかなかった。
別の女性から事故直後に何を考えていたかと問われ、被告は「見つかるといいな」とし、海底からカズワンが引き上げられた際は「(事故を)認めたくない、逃げていた自分もいる。現実なんだと思った」とした。「家族が何で死ななければ」との涙声の訴えには15秒ほど沈黙し、「それに関しては謝っても謝りきれない」と話した。
論告求刑公判は4月、判決は6月の予定。【谷口拓未】
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