<地域からの挑戦>挑戦が循環する地域へ 地元企業と学生で社会課題を解決 佐賀

2026/03/10 15:45 

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 地域から挑戦する人材を育て、イノベーションが生まれる基盤を創りたい――。佐賀県唐津市の一般社団法人「InnoDrops(イノドロップス)」の小山直子代表理事(42)は、学生や若手会社員を対象に、社会課題の解決策を練ることで人材を育成する事業を展開する。目指すのは「挑戦が循環する地域」の構築だ。

 事業の起点は、若者の「やってみたい」という熱量です。起業家精神(アントレプレナーシップ)を育む「STEAMDAYS!!」というプログラムでは、中高生が当事者らにインタビューをしながら社会課題を深掘りし、解決策を作ります。

 一般的な探究プログラムと大きく違うのは、中高生にアドバイスする大学生や地元企業の若手社員の「伴走力」も育成する点です。企業、大学、自治体と連携し、地域の挑戦と経験が循環するプログラムとして運営しています。

 2025年度は精神・発達障害をテーマにしました。中高生たちはインタビューを通じて、障害者の課題に向き合いました。あるチームは、日々の挑戦や振り返りを日記につけると、「次のチャレンジ」を提案してくれるアプリを作りました。

 協賛企業からは「中高生がここまで考え抜くプロセスを実践していることに驚いた」「伴走した若手社員にとって、日常業務では得られない貴重な経験になった」といった反響をいただきました。

 中高生が起業を仮想体験できる「SAND lab」という事業もスタートさせています。中高生と企業が組み、製品の開発、事業のクロージング(終了)まで経験することができます。

 起業のきっかけは、夫の仕事の関係で22年に唐津に移り住んだことでした。特に10代の若者の挑戦機会が少ないことや、過去から変わらない価値観に機会格差を感じました。そんな時に、共同創業者になる唐津出身の田中綾さんに出会い、格差を埋めるような場を作ろうと意気投合しました。今では、現役の大学生で地元に強い思いを持つ梶原漱己(しゅうき)さんらがメンバーに加わっています。

 「地元は好きだけど、働くなら外に出る」という学生たちの話を聞くと、地域経済や伝統を支える地元企業が、就職の選択肢に入りにくいことにジレンマを感じます。

 地元企業と学生が、距離の近さを生かしながら共に学ぶ――。そうした関係性を地域で回し、企業の人材育成が、地域の次世代を担う中高生育成にもつながる循環を根づかせたい。企業も学生も挑戦し、「未来は変えられる」と誰もが思える社会を実現したいです。

 ◇小山直子(こやま・なおこ)

 1983年埼玉県出身。2006年千葉大卒業後、NTTコミュニケーションズ(現NTTドコモビジネス)に入社し、新規事業開発などを担当。22年に佐賀県唐津市に移住し、InnoDropsの前身を設立。24年に法人化した。

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