「風評被害ない」エネ庁幹部が発言 核のごみ文献調査巡り地元は反発
原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定に向けて国内で行われている文献調査を巡り、経済産業省資源エネルギー庁の幹部が「(調査地で)風評被害はないと信じている」と発言した。実際には文献調査に伴う風評被害が確認されており、地元からは地域の実情を直視していないかのような政府の姿勢に反発の声が上がっている。
東京都小笠原村の南鳥島での文献調査実施を政府が同村に申し入れた3日にエネ庁が記者説明を行った際、風評被害への対応を巡る質問に対し発言があった。
この幹部は、2020年11月に文献調査が始まった北海道寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村について、北海道が「風評被害は聞いていない」と道議会で答弁していると説明。その上で「あくまで文献での机上調査なので風評被害はないと信じている。そうしたところは特に南鳥島にお願いするにあたり考慮していない」と述べた。
◇「あなたたちは成仏しませんよ」
しかし、神恵内村が20年10~11月に村内の事業者を対象に実施した風評被害に関するアンケートでは、10月末までに文献調査応募を理由にした宿泊のキャンセルが1件あったほか、商店2件が「正確な金額は算出できない」などとしつつ、風評被害があったと答えた。
さらに「商品を購入しない」「神恵内に二度と来ない」といった抗議や中傷の電話やメールが事業者に約50件、村商工会に約160件、村役場と村議会に計100件以上あった。役場の職員が電話で長時間叱られたり、「あなたたちは成仏しませんよ」などと言われたりすることもあったという。
寿都町内でも同様に抗議の電話などが相次いだ。町が文献調査応募を検討していることが表面化した同年8月、片岡春雄町長は町産品を巡る不買の電話があったことを明らかにしていた。
両町村の周辺自治体にも地場産品の不買を示唆する電話は来ており、ある自治体幹部は「どうしてエネ庁が『被害はない』と言えるのか背景を知りたい」と疑問を呈した。寿都町の自営業の女性は「被害はないと言わないと調査を広げられないのだろう」と推測した。
道は22年6月の道議会で「(文献)調査開始後、寿都町及び神恵内村では、これまでのところ具体的な風評被害の声は寄せられていないと伺っており、道もそうした相談や申し出は承っていない」と答弁した。
道は取材に、神恵内村のアンケート結果を20年当時に把握していたとみられるとし「文献調査開始前は風評被害に対する懸念の声を聞いていた」と答えるにとどめた。被害の有無の判断は示さなかったが、ある道幹部は「懸念の声があるということは、風評被害があったと捉えるのも一つの意見だ。エネ庁は言い過ぎでは」と指摘する。
エネ庁放射性廃棄物対策課は3日の発言について「基本的には被害が発生しにくいものだということを申し上げた」と釈明。風評被害の有無を巡り、「何が風評被害かは非常に難しい問題。あるかないかというよりも、ないように全力で取り組む」と答えた。【片野裕之】
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