条件はファーストクラスに星付きホテル 暴走した元市職員の私欲

2026/03/13 19:44 

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 公務員の立場を悪用して民間企業に便宜を図る見返りの品を指定していた。被告は法廷で体を小さくし、後悔の弁が口を突いた。

 「引き返そうと思ったが、欲に負けた。エスカレートして感覚がまひした」。事件の発覚を受け、妻子は去って行った。

 ◇露見した手慣れた行為

 札幌市から車で北東へ約1時間の距離にある美唄市。かつて炭鉱で栄えた人口約1万8000人のまちで、公共工事を巡る市職員による贈収賄と、市に負わせた過大支出を業者にキックバックさせる横領の両事件が起こった。

 本田強志被告(54)は2020年から市上下水道課係長や課長補佐を務め、入札を行う工事の価格積算などに従事し、内部情報を知る立場にあった。

 被告は収賄と横領の罪に問われ、札幌地裁は13日に懲役2年6月、追徴金約85万円の判決を言い渡した。

 公判での本田被告や業者側の証言で、業者から不正に利益を受ける本田被告の手慣れた行為が露見した。

 判決などによると、市職員時代の21年7月以降に市が一般競争入札などで発注した工事6件に関し、業者Aに非公開の最低制限価格を教えた見返りなどとして、24年11月に航空券代や高級ホテル代など計約85万円相当(2人分)の4泊5日の沖縄旅行費用を業者側に負担させた。

 最低制限価格を下回らないギリギリの見積もり金額を出せば、その業者が工事を落札する可能性は高くなる。業者間で事前調整のない「たたき合い」になった場合の便宜をA社は期待していたという。

 ◇被告側提案の沖縄旅行

 A社側は20年ごろから本田被告を接待していたと証言し、22年から飲食接待の回数が増えたという。

 A社の社長や幹部=いずれも贈賄罪で有罪判決=と、本田被告らの証言を総合すると、本田被告は沖縄旅行前月の24年10月に旅行をA社に提案。

 「沖縄とか行ってみたいよね」

 飛行機はファーストクラス、ホテルは「四つ~五つ星」を条件に挙げたという。被告、被告の部下、A社幹部らの4人で4泊5日の旅行に出かけた。

 A社側は断れば市の内部情報が得られず、売り上げが下がると恐れ、接待を決定したという。本田被告は「接待を受けていけないと認識していた。欲に負けた」と弁明し、「少しぜいたくをしたいと計画した」と明かした。

 ◇動機はハリアー

 一方の背任事件も本田被告から持ちかけ、幼なじみが経営するB社と結託した。24年5月にB社が請け負った工事について、自分たちの利得分約700万円を水増しした代金を市に入金させた。B社社長=背任容疑で逮捕、不起訴処分=によると、21年から始まったという工事費用の水増しを、本田被告はこう提案した。

 「どこの業者もやっている。現金を戻してほしい」

 本田被告は市を退職しB社への入社を計画しており、今回の事件は自身の社用車購入が動機の一つとなった。

 トヨタのスポーツタイプ多目的車(SUV)ハリアーを会社名義で購入させることを複数回依頼。本人が法廷で言及したハイブリッド車のハリアーは現行の販売価格で430万円から。600万円を超えるものもある。

 B社社長は購入を断ったものの、不正に市から得た「利益」の一部は本田被告の元へと還元された。

 判決では被告が手にした具体的な利得の金額は不明とされたが、公判では自家用のミニバンを購入する費用の一部60万円、冬用タイヤ、冷温庫を手にしたことが明らかになった。

 本田被告は動機について「単純に欲。悪いことと律することができなかった」と語った。まひした感覚が収賄、横領に走らせた。【谷口拓未】

毎日新聞

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