「保釈却下の理由、裁判官に聞きたい」と提訴の遺族 大川原冤罪
化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の冤罪(えんざい)事件で、胃がんが見つかりながら保釈されずに亡くなった元顧問の相嶋静夫さん(享年72)の遺族が6日、国を相手取り約1億6800万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。逮捕状の発付や保釈を認めない判断に関わった計37人の裁判官の責任を問うことが目的で、遺族は「保釈を却下し続けた理由を裁判官に聞きたい」と訴えた。
訴状によると、相嶋さんは2020年3月に外為法違反容疑で逮捕・起訴され、約7カ月後に胃がんが判明。20年11月に勾留が一時停止されて外部の病院に入院したものの、21年2月に被告の立場のまま亡くなった。弁護側は8回にわたり保釈請求したが、東京地検が反対し、東京地裁も追認した。地検は21年7月に起訴を取り消したが、遺族側は「証拠資料を吟味すれば逮捕や勾留の必要性がないことが裁判官は容易に認識できた」としている。
提訴後の記者会見で、相嶋さんの妻(77)は、ペットボトルのお茶を手に「夫はこのお茶を1本持って、警察に連行された。11カ月後にやっと自宅に帰ってきた時は、骨つぼに入った遺骨になっていた」と当時を振り返った。胃がんの進行で体調が悪化する状況でも裁判官による保釈却下が続き、相嶋さんが「これでも人間なのか」とつぶやいたことを明かした。
罪を認めなければ簡単に保釈されない問題は「人質司法」とも呼ばれる。長男(52)は「裁判所に正面を切って声を上げられるのは私たちしかいない。今、私たちが声を上げなければ、人質司法は数十年改善されず、また新たな被害者がでる」と語った。
次男(49)は「父は『正しいことがなぜわかってもらえないのか』と訴えながら、絶望の中で命を削っていった」と振り返り、「二度と同じ悲劇が繰り返されない社会にしたいと強く願っている」と話した。高野隆弁護団長は「この国の司法にまん延している人質司法の問題を問う重要な訴訟だ」と訴えた。
東京地裁の後藤健所長は6日、遺族側からの提訴について「具体的な事件についてのコメントは差し控える」とした。
憲法が保障する「裁判官の独立」の観点から、東京地裁や最高裁は相嶋さんの保釈に関する検証はしていない。最高裁は1月に全国の刑事裁判官約70人を集めた研究会を開き、保釈のあり方を議論した。【遠藤浩二】
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