熊本地震で被災の神社 宮大工目指す10代3人、1年かけ再建
熊本県立球磨工業高校で伝統建築を学ぶ生徒たちが、2016年の熊本地震で被災した大分市の神社を再建した。今年4月の発生10年を前に願いがかない、管理する地元住民は「感無量だ」と喜びの涙を流した。【山口泰輝】
大分市大在北3の天神社(てんじんしゃ)には3月19日、ヒノキ造りの鳥居(高さ2・3メートル、幅1・8メートル)とほこら(高さ1・8メートル、幅1・6メートル)が設置された。この日の朝に学校から届いたパーツを生徒と教員らが約5時間かけて、手作業で組み立てた。
作業に当たった生徒は、球磨工業高伝統建築専攻科1年の奥村渓さん(19)と中村結和さん(19)、西陽生さん(19)の3人。鳥居とほこらは建築実習の一環で、約1年かけて完成させた。
伝統建築専攻科は宮大工を養成する全国でも珍しい学科で、高校卒業後の2年間で伝統建築技術を実習を通して学ぶ。専攻科ではこれまでも、地震で倒壊寸前になった熊本県南小国町の白川天満宮本殿の修復作業などに取り組んできた。
今回再建した天神社は、学問の神様として知られる菅原道真をまつる神社で、地元では「天神様」と呼ばれ親しまれてきた。約400年前の江戸時代に建てられたとされ、近くに住む藤澤裕冶さん(67)一家が長年管理する。
16年4月に2度の最大震度7を記録し甚大な被害が出た熊本地震では、大分市でも震度5弱を観測。天神社は老朽化が進んでいたこともあり、石造りの鳥居にひびが入るなどの被害が出た。その後も別の地震や風雨などの影響で、鳥居上部の柱と柱をつなぐ「貫(ぬき)」が傾いて倒壊する危険性が高まったため、解体を余儀なくされた。
知人を通じて伝統建築専攻科の取り組みを知った藤澤さんは、「代々受け継いできた天神様を、自分が死ぬまでに再建したい。このままでは先祖に申し訳ない」と再建を依頼。一家のルーツが熊本にあることにも、「不思議な縁」を感じていた。19日の設置作業の際には、「私をかわいがって育ててくれた先祖に恩返しができたのでは」と涙ながらに感謝した。
熊本地震では、熊本城など多くの伝統ある建築物も被災した。奥村さん、中村さん、西さんの3人は、それらの修復に携わる宮大工の姿に憧れてきた。「地域で信頼される宮大工になりたい」。天神社の設置を終えて、声をそろえた。
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