東大出身の32歳発案 自治体飛び越えた新しい部活のカタチとは

2026/04/19 09:15 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 「部活動改革はお金の調達から」。公教育改革を進める地方の3市が連携して企業から拠出金を募り、その運用益を基にして活動する一般社団法人「放課後共創基金」を立ち上げた。東京大出身の元地域おこし協力隊員の発案で、教員の負担軽減や少子化などの課題を乗り越えるため、自治体の枠を超えて部活動を共同運営し、放課後の多様な学びの実現を目指して独自に動き出した。

 文部科学省は部活動を学校だけでなく、地域のクラブなどが全体で支えるよう改革を進めている。ただ、部活動はこれまで教員のボランティアで成り立っていたため、運営経費など財源確保が課題のままだ。

 基金は香川県三豊市(人口約5万7000人)、石川県加賀市(同約6万1000人)、高知県須崎市(同約1万9000人)の3市長が発起人となり、2月に設立された。コンサルティング会社も参加し、代表理事には鈴木寛・東京大学公共政策大学院教授が就いた。22日には東京で設立記念フォーラムを開く。

 発案したのは、基金事務局長を務める三豊市教育センター長の小玉祥平さん(32)だ。言語学を研究していた東大の学生時代の2017年に三豊市内でサマースクールの講師をしたのが縁で、国語教育のサポートをする地域おこし協力隊に19年に着任。任期後に同市に移住した。その教育プログラムを評価した同市によって21年に同センター長に任命された。

 小玉さんは活動する中で、「学校単位のままでは少子化で部活動が先細りする」と危機感を抱き、学校の枠を超えて活動する「みとよ探究部」の創設に関わった。21年に誕生し、地域のテーマを生徒各自が設定し、地元の人の指導を受けながら解決に取り組む部活動だ。

 同市は部活動改革を積極的に進めており、探究部に続いて、三井住友信託銀行の協力を得て生徒が人生とお金を考える「みとよマネー部」、インターネットの仮想空間で世界の人と交流する「メタバース部」、「軟式野球クラブ」など多数の地域クラブができた。

 一方、同市でも財源問題が浮上した。行政だけで全てを賄うのは難しい。そこで小玉さんは、23年に開校した私立「神山まるごと高専」(徳島県神山町)が導入している学費無償の仕組みを参考にすることを思いついた。同高専では、大企業11社が各10億円を拠出し基金を創設し、運用益で無償化を実現した。三豊市でも小玉さんの提案を受けて導入に向けた検討が始まった。

 さらに「自治体の枠も取り払えば、三豊の子どもたちも一緒に学べる仲間が増える」と考え、熱心に公教育改革に取り組む加賀市、須崎市の知人の教育指導者に相談し、2市も参加することになった。

 基金では「挑戦から始まる放課後を、日本のあたりまえに。」をコンセプトとして三つの柱を据えた。

 一つ目は財源確保。基金の運用益を自治体や地域団体に配分することで、放課後の学びを持続的に支える。

 二つ目は、自治体同士でオンライン同時配信の共有を進めて部活動を共同運営し、子どもたちの放課後の選択肢を拡大すること。

 三つ目は企業と連携した部活動の創出。企業にも市場調査の一環になり得る上、自社ブランドを広く知ってもらえ、将来の顧客獲得につながるかもしれない。

 基金に拠出する企業はまだ確定していないが、「社内のかなり深いところまで相談が上がっている企業はある」と小玉さん。「参加自治体はまだ3市だけだが、いずれも教育改革で実績があるため、企業の新たな視点を取り入れた新しいクラブを生み出せるはず。そうなれば、他の自治体にも参加を呼びかけたい」と話す。

 22日の設立記念フォーラムは午後4時から東京で開催。鈴木代表理事、3市の市長や教育長、有識者らによるパネルディスカッションや講演がある。参加無料。オンライン視聴可。参加申し込みや詳細は「放課後共創基金」の公式サイトから。【佐々木雅彦】

毎日新聞

社会

社会一覧>