子どもの発達障害診る医師が減る? 診療報酬改定に現場が悲鳴
6月1日の診療報酬改定を巡り、発達障害のある子どもの家族や医療現場に動揺が広がっている。
子どもの発達障害の診察で日常的に算定される「通院・在宅精神療法」の報酬について、精神保健指定医の国家資格を持たない医師の場合、原則として4割減らされることになった。
子どもの発達障害を診る小児科医や児童精神科医の多くはこの資格を持っていない。報酬減額で採算が取れず、診療が維持できなくなる恐れが出てきた。
◇報酬改定の内容は
「このままでは子どもの発達障害を治療する病院が激減し医療崩壊が起きます」
発達障害当事者協会が5月初旬、Xでコメントを出すと、瞬く間に拡散された。
「ただでさえクリニックが少ないのに」
「今でも予約が数カ月待ち。悪化するのでは」
SNSには悲鳴のような投稿があふれた。
今回、報酬改定の対象となる「通院・在宅精神療法」は、一定の治療計画のもと、医師が外来で対人関係の改善や社会適応能力の向上などを図るために働きかける治療法だ。
6月1日から精神保健指定医の資格がない医師の場合、従来は初診(60分以上)で5500円だった報酬が3300円に、再診(5分超~30分未満)は2900円から1740円に引き下げられる。
一方、指定医の場合は初診が6000円から6500円に上がる。
◇子どもへの影響議論されず
なぜこの診療報酬が改定の対象になったのか。
近年、精神科では研修医を終えた後、十分な経験を積まぬまま精神科クリニックで診察し、安易な診断や向精神薬の過剰処方をするケースが都市部を中心に問題となっていた。
厚生労働省は精神科医療の質を担保するため、実務経験が問われる精神保健指定医の資格の有無で報酬の線引きを行うとしている。
しかし精神保健指定医は、同意のない入院や身体拘束といった人権を制限する判断を法に基づいて行うための資格だ。
子どもの発達障害を外来で診る医師がこの資格を必要とする場面はない。
◇当事者「医療崩壊が起きる」
改定を受け、クリニックの中には患者に自費の予約料を求めたり、発達障害の診療を縮小して一般の小児科に移行したりすることを検討する動きも出てきた。
発達障害者当事者協会の嘉津山具子事務局長は「発達障害を診る医療機関がただでさえ不足し、初診待機が深刻なのに、今回の改定でさらに悪化してしまう。早期発見、早期支援の考え方と逆行している」と批判した。
日本自閉症協会も「もともと医師不足の地方において必要な医療を受けにくくなるのではないか」とコメントを出した。【黒田阿紗子】
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