伝え続ける「いっちゃん」の言葉 エレベーター事故20年で献花
東京都港区の区立住宅で2006年、住人で都立小山台高校2年の市川大輔(ひろすけ)さん(当時16歳)がエレベーターに挟まれて死亡した事故から3日で20年がたった。現場となった住宅内の施設で献花式があり、多くの人が花を手向けた。
市川さんは小山台高で野球部に所属しており、会場にはグラブや写真などが展示された。同級生で野球部のマネジャーだった長谷部奈菜子さん(36)は「今年も来たよ」と心の中で語りかけたといい、「いっちーが生きていたらどうなっていたのだろう」と悼んだ。息子が同校の同級生で、同じ野球部だった安斎シゲ子さん(73)は「事故を風化させてはいけない。いっちゃんの死を無駄にしない」と誓った。
後輩にあたる現役部員らの姿もあった。市川さんは生前、部の「野球日誌」に「限りある時間を大切に過ごす」とつづっており、その言葉は福嶋正信監督(70)が今も部員らに伝え続けている。主将で3年生の横山幸二郎さん(17)は「毎日を大切に生きないといけないと感じている。一緒に甲子園に行きましょうと伝えた」と話した。
事故は06年6月3日夜に発生した。シンドラーエレベータ社製エレベーターが扉が開いたまま上昇し、市川さんが挟まれて死亡した。
事故を受けて国は09年9月以降に新設されるエレベーターに扉が開いたままの移動を防ぐ補助ブレーキの設置を義務化し、それ以前のものへの設置も促した。だが、二重ブレーキの設置率はいまだに4割程度にとどまり、母正子さん(74)は全基への設置を求めて活動を続ける。「エレベーターの事故はみんなの安全の問題。安全には終わりはなく、これからも安全な社会の実現に向けて訴え続ける」と話した。
この日は事故の再発防止を誓う集会も同じ住宅の敷地内で開かれる予定だったが、台風の影響で中止となった。【木下翔太郎】
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