専用収蔵室なく…昆虫標本にカビ ジリ貧の九大博物館、寄付募集

2026/07/28 11:19 

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 国内最大級の昆虫標本などを有する九州大総合研究博物館(福岡市)が、資金難により収蔵品の保管に支障を来しているとして、保存環境の整備や標本の修繕などに充てる費用を調達する寄付募集を始めた。寄付による運営資金の確保は、2023年に国立科学博物館(東京都)や東北大植物標本庫(仙台市)が先駆けとなり注目を集めたが、国立の学術施設の苦境は相変わらずのようだ。

 ◇収蔵品176万点、貴重な物も

 九大では長年、各学部や各研究室が個別に標本や資料を保管していたが、大学全体でコレクションを整理し、活用する目的で00年に博物館を設立。大学のキャンパス移転に伴い、空き物件となった旧工学部本館を07年から使用している。

 収蔵品は国内外の生物標本や化石、鉱物など176万点に上り、学術的に貴重な物も多い。故・高(こう)壮吉教授が明治から昭和初期に全国各地や海外から集めた「高壮吉鉱物標本」は、日本三大鉱物標本の一つに数えられる。日本人起源論の研究で重要な役割を果たした弥生時代の人骨もある。

 中でも、世界の注目を集める昆虫研究は100年以上の歴史があり、国内外で集めた昆虫標本は120万点に達する。標本になっているゾウムシやハネカクシが新種だったと判明する事例は後を絶たず、その数は毎年10~20種以上になる。

 ◇昆虫標本破損、動物の骨格標本も劣化顕著

 世界有数のコレクションは、研究者だけでなく、市民にも無料で公開されている。ただし、近年は劣化が進み、存続が危ぶまれている。築100年近い旧工学部本館には温度や湿度を一定に保つ専用の収蔵室がなく、通常のオフィス用空調設備による保管には限界があるためだ。

 昆虫の標本箱は木製で1世紀前に製造されたものもある。ふたを開けると中にカビが生えていたり、標本が破損したりしている物も。魚類学者ながら和歌や俳句にも造詣が深く、「お魚博士」としてお茶の間にも親しまれた内田恵太郎氏(1896~1982年)が研究に用いた魚類標本などの収容棚は、耐久性や収納効率の問題を抱える。約100年前に医学部の実習で使われた動物の骨格標本約250点も劣化が顕著だ。

 年間約410万円(25年度)に及ぶ九大博物館の光熱費は、国から大学に配分される運営交付金などで賄っている。頼みの交付金は減額が続く上、近年は円安の影響などにより収蔵品の保管にかかる光熱費が高騰。研究員個人の研究費を標本箱の購入や収蔵品の修復などに充てているケースもあり、博物館は現状の打開策の一つとして今回の寄付に望みをかける。

 九大博物館の丸山宗利准教授(昆虫学)は「技術が進歩すればコレクションの用途も広がる。人類の貴重な財産として後世に残したい」と協力を呼びかける。

 寄付は5月に開始し、26日時点で寄付額は531万円に達した。目標額は29年度末までに3000万円。寄付は個人が1万円、法人・団体が10万円から受け付け、金額に応じてオリジナルグッズやバックヤードツアーなどの返礼がある。問い合わせは、大学同窓生・基金課(092・802・2150)。【田崎春菜】

毎日新聞

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