経験あれど…猛暑に苦しむ車中泊 「状況把握」に苦慮する自治体

2026/07/31 19:43 

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 熊本県で最大震度7を観測した地震の被災地では、余震への恐れに加え、厳しい暑さを避けるため、車中泊を選ぶ被災者も多い。10年前の地震では体調悪化から亡くなるケースも報告された。その教訓は生かされるのか。

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 ◇「苦手な人もいるだろうし」

 30日の午後、震度7を観測した熊本県宇城市の市役所駐車場を記者が訪ねると、トランクを開けた車のそばで、江川キミエさん(91)が子猫のいるケージをのぞき込んでいた。自宅が被災し、娘で会社員の築嶋ナミさん(58)と2人で車中泊をしている。

 飼い猫は生後3カ月の「みーちゃん」。地震発生直後は、ケージから逃げ出し、行方が分からなくなっていた。だが、被災から2日後、2人がいったん自宅に戻ると、押し入れの中から「みゃーみゃー」と、か細い鳴き声が2度聞こえ、再会できた。

 「普段は鳴かない子ですが、猫が苦手な人もいるだろうし」と築嶋さん。一緒に避難所の建物に身を寄せることはできなかった。

 自宅は電気が使えるようになったものの、足の踏み場もないほど散らかった状態だ。断水が続き、手も洗えないため片付けがままならず、しばらく車中泊を続けるという。

 ◇サポートあっても「本当は…」

 2016年に2度の震度7を観測した熊本県が翌年公表した県民アンケート(3381人回答)によると、避難経験者2297人のうち68%が、避難で利用した場所(複数回答)として「自動車の中」を挙げ、その場所を選んだ理由として「ペットがいたから」とした回答は14・4%だった。当時は狭い車内で長時間、同じ姿勢で過ごすなどした避難者の間でエコノミークラス症候群(肺塞栓(そくせん)症)の発症が問題になった。

 築嶋さんも10年前の地震の時、別の猫を飼っていたため車中泊をしていた。その経験があるとはいえ、今は連日の猛暑下だ。車のガソリンは残り半分ほどに。エンジンをかけてエアコンをつけると「すぐになくなる」といい、夜間は自宅から持ち出したポータブル送風機でしのぐ。昼間は屋外で休む。「木陰はまだ風があるので」と気丈に話すが、「地震が起きた時からシャワーも浴びていない」といい、2人の表情に疲れは隠せない。

 今回は、巡回の医療従事者からエコノミークラス症候群予防で血流を促す弾性ストッキングが配られ、市民団体からもペットを飼育する避難者向けに行政相談窓口の情報提供を受けた。築嶋さんはサポートを心強く感じる一方、「本当は避難所の中に入れるのが一番……」ともこぼす。

 ◇国の方針、追いつかぬ現場

 国が24年6月に策定した在宅・車中泊避難者等の支援の手引では、災害関連死を防止する観点で、発災直後から保健師や地域などが避難者の状況を把握する必要性を挙げている。

 宇城市によると、発災直後から駐車場を車中泊用の避難所として開設した「豊野防災拠点センター」では、30日夕方時点で計20台の利用を確認したという。ただ、避難所ではなく自宅に止めた車内で寝泊まりしたり、昼間は避難所の建物内にいて寝るときだけ車に移ったりするケースもあり、全体数や状況の把握は難しい。

 市によると、発生当日の午後11時ごろから、長崎大などの医療チームが自主的に市内の避難所を回るのと並行して車中泊の避難者に声かけをしている。市の保健師も避難所を回るが、車中泊避難者へのアプローチが本格化するのはこれから。国の手引が掲げる「発災直後からの状況把握」は追いついていないのが実情だ。【菅野蘭】

毎日新聞

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