最後の花園に臨む監督に届けたい勝利 群馬・明和県央の監督退任へ
33年前は無名のチームだった。そんな明和県央(群馬)のラグビー部を長年にわたって指導し、全国大会常連に押し上げた成田仁監督(56)が今年度で退任する。27日開幕の第104回大会の初戦を前に、選手たちは「監督最後の花園で勝利を」と意気込んでいる。
成田監督が部の指導に携わり始めたのは、国士舘大を卒業して間もない1991年。23歳だった。群馬県内の古豪・東農大二のスクラムハーフ(SH)として花園に2度出場した経験を生かし、指導にあたるようになった。
自分の母校の高校時代の恩師に憧れ「カリスマになろう」としていた。「俺にタックルしてこい。倒してみろ」と文字通り体当たりで指導した。厳しい練習を課し、戦術を細かく指示した。
98年に監督に就任。この頃にはチームは県予選ベスト4に名を連ねるまでに成長した。ところが、その先が険しかった。チームを鍛え、10年間で4度、決勝に進出したが、そこで競り負けた。「一生かかっても花園にいけないのかな」と弱気になった。
「指導を変えないといけない」。考え抜いた末に「自分はカリスマじゃない」と気づいた。選手を信じ、監督の指示を待つのではなく、自主性を育てようと決めた。
細かく口出しするのはやめた。どんな練習がしたいかを尋ね、サポートに回ることにした。厳しく指導するのは集中力を欠いた時だけ。体をぶつけ合うコンタクトスポーツだけに、けがをさせないためだった。
変化は実り、2009年、悲願だった花園への初切符をつかんだ。「若い頃にチームを任せてもらい、失敗も糧になった」と振り返る。その後は花園常連校となり、今大会を含め11度チームを花園に率いた。
後任には、明和県央での教え子、立見聡明部長(27)が就任する。14年度に2年生で花園に出場し、ベスト16入りを経験したが、3年生では2回戦で敗退。この時、成田監督は選手一人一人の手を握り「この悔しさを忘れるな」と激励した。
来季からチームを率いることになる立見部長は「自分が監督になる不安はある。ただ、成田先生に教わった母校の監督になれるのはうれしい」と話す。
平坂桜士主将(3年)は「監督にはラグビーに懸ける気持ちの強さを教わった。監督のためにもベスト16に入る」と誓う。【加藤栄】
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