錦織圭×国枝慎吾 テニス界のレジェンドが次世代に伝えたいこと

2024/12/27 09:01 

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 テニス界のレジェンドが次世代に伝えたいことは――。

 元世界ランキング4位の錦織圭選手(ユニクロ)と、長らく車いすテニス界をリードし、国民栄誉賞も受賞した国枝慎吾さんが12月、米フロリダで日本国内のトップジュニア選手の「コーチ」を務めた。けがからの本格復帰に向けて歩を進める錦織選手と、フロリダを拠点に米国テニス協会で車いすテニス専門のアドバイザーとして後進を育成する国枝さん。10代のころに海外で学んだことや子供たちに伝えたいことを、毎日新聞の単独オンラインインタビューで語った。【聞き手・大村健一】

 この海外合宿は、「ファーストリテイリング財団」(柳井正理事長)の支援でスタート。3回目となる今回は、今年8~9月にあったユニクロ全日本ジュニアテニス選手権(毎日新聞社、日本テニス協会主催)の優勝者らを対象に12月14~23日に開催された。車いすテニスのジュニア選手も初めて加わり、世界トップクラスの選手たちと研さんを積むとともに、2人の教えを受けた。

    ◇    ◇

 ――初めてテニスで海外を訪れたときに感じたことを教えてください。

 国枝 僕は高校1年生の時に、オランダと英国に遠征しました。まだYouTubeもない時代で、車いすテニスのナンバーワンの選手がどんなプレーをするかも知らなかった。そのヨーロッパ遠征で、初めてプレーを間近で見て、ものすごく刺激的でした。打ち方もまねしましたし。「こんなにヨーロッパは進んでいて、プロの選手がいて、ラケット一本で食っているんだ」というのをコート上で見ることも、日本では経験したことがなかったので、鳥肌が立ちました。

 あとは、同世代のジュニアの選手と触れ合ったことも記憶に残っています。今でも現役の選手もいますし、たまにその時の話もしますね。

 英語は通じなかったことも覚えてますね。学校の成績もまあまあ良かったんですけど、「こんなに英語が通じないんだ」ということは、海外に行って知ったことでした。

 錦織 僕は11、12歳ぐらいのときに、米国に遠征しました。良かったのは、格上の選手と練習をして、「世界トップレベルの選手に近づくにはどうしたらいいんだろう?」という基準が自分の中にできたこと。それは成長につながりましたね。

 あと、米国は実力社会。自分の存在をアピールしていかないと認めてもらえなかったので、気持ちは強くなったと思います。

 ――若い世代にアドバイスする機会も増えていると思います。接するときに心がけていることはありますか?

 国枝 自分も成長していくことをすごく楽しんでいたので、変えることや何かにチャレンジすることに、臆病にならないでほしいと米国の選手にも伝えています。「臆病にならずにどんどんチャレンジしていこうぜ」って、よく話していますね。

 錦織 (ほほえみながら)僕はまったく教える才能がないんで。感覚でやってきた部分が多くて、なかなか言葉で伝えられないんですよね。そこは悩みです。

 慎吾さんと同じで、自分の経験を伝えることが大事だと考えています。そこは人一倍あると思うので。

 あとは、子供たちの良さを残すこと。テニスって、フォームとかは、最悪なんでもよくて……もちろん、ある程度の正解はあるんですけど、答えがないことを教える難しさは感じますね。それぞれの個性もありますし。(教えることは)将来の課題ですね。

 ――子供たちのコーチをすることで逆に得られるものはありますか?

 国枝 やはり、その子の成長を見られる瞬間ですよね。最近、僕は2週間半ぐらい日本に帰っていたのですが、その間にめちゃくちゃうまくなっていたんですよね。「何が起きてんだ?」「違う人じゃないの?」ってことが多くて。そういった瞬間に立ち会えることがすごくうれしいですね。

 錦織 子供たちが楽しんでいる姿は、こちらも素直にハッピーになりますね。日本の大会でトップになるぐらい、そもそも才能がある選手たちが来てるので。それを間近で見たり、アドバイスできたりというのは、楽しい経験です。

 ――今の若い世代と自分たちの世代の違いは?

 国枝 今はYouTubeなどで、テニスの教材のようなものがたくさんありますよね。それは僕が育った時よりも、ずいぶん優位なところかなとは思います。

 トップ選手のスローモーションもすぐ見られるし、どういうふうに打っているのかを自分自身で研究することが可能な時代になってきたと思っています。

 車いすテニスが放映される機会なども増えてきて、興味があれば必ず情報にたどり着けるようになっているところは、まったく違いますね。

 選手のマインドも変わったと思います。「トップ選手がどうやってプレーしているのか」「どういった賞金をもらっているのか」が分かってきている。これは、僕が子供の時には見えなかった。

 ――お二人の2025年の目標も教えてください。

 国枝 引退しても目標を聞かれるっていうのは、うれしいことですね。今は英語を力を入れてやっていますけど、もう少ししゃべる能力を上げたいと思っています。コーチをしている中で、自分自身が持っている情報をしっかり伝えたいというのが目標ですね。

 錦織 明確な目標はないんですが、もう少し自分のテニスランキングが戻せたら……というところではあります。年明けに全豪オープンがいきなりありますけど、まだなかなか(準々決勝以降が実施される)2週目にいく自信がないので。自信を持って(「2週目に進む」と)言えるところにはまだいないのが現状ではあるんですけど、そこを目標にしたいと思います。

毎日新聞

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