五郎丸さん以来の全勝V逃すも 早稲田が見せた誇り 大学ラグビー

2025/01/13 20:48 

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 ラグビーの第61回全国大学選手権は13日、東京・秩父宮ラグビー場で決勝があり、早稲田大(関東対抗戦1位)は帝京大(同2位)に15―33で敗れ、5大会ぶり17度目の頂点はならなかった。

 体をぶつけ合う鈍い音が、何度も響く。今季の早大の真骨頂は2点を追う前半残り5分に凝縮された。ゴール前で帝京大の連続攻撃を受けるも、鋭いタックルで押し戻し窮地を脱した。

 2点リードされて風上の後半へ。大学屈指のキッカーを擁する早大にとっては、逆転勝利に向けた道筋は整ったはずだった。しかし、中盤以降も衰えない帝京大の守りの重圧に苦しみ、昨年11月の対抗戦では優位に立ったはずのスクラムでも後手に回った。

 後半は早大がノートライ、帝京大には3トライを許す理想と正反対の展開に。大田尾竜彦監督は「持てるものを全て出した。ただただ、帝京さんが素晴らしかった」と完敗を認めた。

 「2年前はボコボコに負けたので。今回はボコボコに仕返したいなって。スローガンの『Beat Up(たたきのめす)』を体現するラグビーを見せたい」

 決勝を前に早大のフッカー佐藤健次主将(4年)は決意を語っていた。

 2年前の全国大学選手権決勝で、同じ帝京大に20―73で惨敗した。決勝での最多失点、最大得点差記録を更新される屈辱だった。

 完敗の一因がスクラムだった。当時2年生でフッカー転向1年目だった佐藤主将は「何もできず、コテンパンにやられた」と回想する。前回大会も準々決勝で京産大に28―65と大敗した。

 チーム作りの見直しが加速した。スクラムなどセットプレーは複数年をかけた強化で引き出しを増やした。攻撃はここ数年の蓄積で土台ができていることから、今季は守りに注力して積極的に重圧をかけにいくスタイルを再構築した。

 大田尾監督は「イメージでいうと例年は攻撃7割、守備3割だったのが、今年は守備8割、攻撃2割。いかにハイプレッシャーの守りができるかをチームフィロソフィーにして、ゼロから着手した」。

 強豪と比べて小さな選手が集まる早大にとって、多くの時間を相手陣で過ごすことが勝利への近道だ。総合力の高い2年生FB矢崎由高やロングキックが持ち味の1年生SO服部亮太ら戦術にマッチする下級生の成長も快進撃を後押しし、対抗戦は7戦全勝。佐藤主将は「楽しんでいつも通りプレーができれば、必然的にチームがいい流れに乗れるところまで来た」と自信を深めた。

 決勝は相手の重圧を前にリズムをつかめず、五郎丸歩さんが4年生だった2007年度以来、17季ぶりの全勝での大学日本一には届かなかった。

 それでも屈辱的な敗戦から着実に前進した姿を示した。佐藤主将は「最後の一年は本当に素晴らしい一年だった」。「アカクロ」のジャージーをまとう勇者たちが、伝統の部歌「荒ぶる」を響かせる日も近い。【角田直哉】

毎日新聞

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