「俺が止める」 主役に躍り出た前橋育英の守護神 全国高校サッカー
◇第103回全国高校サッカー選手権決勝(13日、東京・国立競技場)
◇○前橋育英(群馬)1―1(PK9―8)流通経大柏(千葉)●
前橋育英の山田耕介監督は試合後、正直な胸の内を明かした。「今日は、PK戦くらいでないと勝てない感じがしていた」
優勝候補に挙げられ、準決勝までの4試合で16得点の攻撃力を誇る流通経大柏を最少失点に抑えてPK戦に持ち込むと、主将の石井陽はキャプテンマークをGK藤原優希に託した。
石井は「『PK戦のキャプテンはお前だ』という思いで、気持ちを込めて『止めてくれ』という思いで渡した」と明かす。
守護神の藤原は期待と責任を背負いつつも、高揚感があった。
「PK戦になったら自分が主役になれる。自分が止めてヒーローになることしか考えていなかった」
先げりだった流通経大柏の8人目のPKを止め、優勝に王手をかけた。だが、直後に味方のキッカーが失敗。自らを責めて下を向く仲間を藤原は「俺がもう1本止めるから任せろ」と鼓舞した。
流通経大柏の10人目のキックにやや右に跳び、ボールを両手で前にはじき出すと、両拳を握って短くほえた。味方の10人目が成功し、6万人近い観衆を集めた国立競技場の主役となった。
今年度の全国高校総体は群馬県予選の準決勝でPK戦で力尽きた。今大会は2回戦の愛工大名電(愛知)戦でPK戦を制するなど、接戦を勝ち上がってきた。伝統のパスサッカーを展開しつつ、劣勢でも相手の隙(すき)を突いて巻き返す試合巧者ぶりが光った。
クライマックスは、初優勝した7大会前の決勝でもぶつかった流通経大柏に、再び大接戦の末に勝利。山田監督は全国高校総体の結果などを踏まえつつ、感慨深げに語った。
「『あんまり今年は……』という感じだったが、本当に選手たちがよく頑張ってくれた」【高野裕士】
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