トランプ氏のグリーンランド購入発言 自治政府は否定も対話に前向き

2025/01/14 18:17 

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 米国のトランプ次期大統領がデンマーク領グリーンランドの「購入」に食指を動かしていることを受け、デンマーク政府は現地の防衛強化の検討を始めた。一方、かつて本国の植民地支配を受けていたグリーンランドの自治政府側は、売却の可能性を否定しつつ、防衛面などでの対米協力には前向きな姿勢だ。

 グリーンランドは世界最大の島で、大部分が北極圏に位置する。ロシアが米国へミサイルを発射した場合には上空を通過する可能性が高いとされ、米国にとって安全保障上の重要性が高い。そのため、米軍はレーダー基地を置く。また、地球温暖化の影響で探査が以前より容易になり、ウランやレアアース(希土類)、石油などの地下資源の存在も注目されている。

 トランプ氏は大統領1期目にもグリーンランド購入に意欲を示していた。1月20日の2期目就任が近づく7日、購入のためには軍事力や経済的な圧力の行使を辞さないとまで発言し、新たに物議を醸した。

 米国とデンマークは共に北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、米国による同盟国への軍事力行使は通常では考えられない。だが、デンマーク政府は島の守りを強化する方針だ。ロイター通信によると、現状では警戒船4隻、偵察機1機と犬ぞり隊が従事するだけだが、F35戦闘機の配備などが候補に挙がっている。

 デンマークのフレデリクセン首相は9日、トランプ氏に会談を申し入れたが大統領就任前には実現しない見込みだと明かした。米ニュースサイト「アクシオス」によると、デンマーク政府は非公式な書簡をトランプ氏のチームに送り、接触を試みているという。

 一方、グリーンランドのエーエデ自治政府首相は、自分たちが暮らす島は「売り物ではない」と強調しながら、「(トランプ氏との)対話の用意はある」と発言した。防衛面や地下資源の採掘で米国との協力関係を強化したいという。

 1953年まで本国の植民地だったグリーンランドでは、人口約5万6000人の多くを先住民族のイヌイットが占め、長年にわたり独立を望む世論がある。今回のトランプ氏の発言を独立へ向けた好機とする見方も一部にはあり、エーエデ氏は米側の出方を慎重に探っている模様だ。

 独立志向を公言してきたエーエデ氏は10日、「デンマークとの関係を絶つつもりはない」と述べつつ、独立への願いは「誰もが尊重すべきこと」と語り、こう訴えた。「私たちはデンマーク人にも米国人にもなりたくない。グリーンランド人でありたいのだ」。【ベルリン五十嵐朋子】

毎日新聞

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