<センバツここに注目2025>能登の被災者に届けたい1勝の思い 日本航空石川のエース蜂谷逞…

2025/02/24 06:10 

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 3月18日に開幕する第97回選抜高校野球大会。主役候補となる投打の注目選手を紹介します。10回目は日本航空石川の蜂谷逞生(たくま)投手。雪辱に燃える2年生右腕に迫りました。

 ◇「悔しい、しかなかった」

 試合後、悔しくて眠れない。生まれて初めての経験だった。エースナンバーを背負って臨んだ昨年のセンバツ。常総学院(茨城)との1回戦で九回に救援したが、打者3人からアウト一つしか奪えず降板した。「悔しい、しかなかった。それ以外はあまり覚えていないんです」。雪辱への思いが己を成長させた。

 右腕から投じるスピンの利いた直球が特長。中学時代から直球は140キロを超え、回転数も目を見張るものがあった。高校では1年秋からベンチ入り。中心選手の一人として投手陣を支えてきた。

 それだけに、前回大会での不本意な投球はショックだった。「高校で球速が上がっていない」と伸び悩みを感じていたこともあり、「すぐに飽きてしまう」という自分を見つめ直した。

 苦手だったウエートトレーニングに地道に取り組んで下半身を強化し、投球フォームを安定させた。球により力を伝えるため、風呂上がりの柔軟も毎日続け、開脚前屈も得意になった。

 成果が実ったのは昨秋だった。チーム最多の47回を投げて46個の三振を奪い、北信越大会準優勝に貢献。最速は145キロまで向上し、150キロ到達も現実的な目標になってきた。

 石川県輪島市にある学校は昨年1月の能登半島地震で被害を受け、前回大会は系列校がある山梨で練習を積んで臨んだ。その後、学校は東京都青梅市に一時移転。野球部は輪島市に戻って活動を再開したが、9月には能登で豪雨災害が発生した。部員たちは交代で被災地に入り、土砂が流入した民家の泥出しなど力仕事に一役買った。「思い切り野球ができるのは普通のことじゃない」と思いを強くした。

 今春のセンバツでは全力プレーと、昨年は届かなかった勝利を見せたいと誓う。たくましさを増し、再びの春に挑む。【石川裕士】

 <次回は25日朝、西日本短大付(福岡)の中野琉碧(るい)投手(2年)を公開する予定です>

毎日新聞

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