乱打戦、二刀流の活躍、新戦力台頭…常連校が続々、夏の甲子園へ

2025/07/28 17:49 

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 第107回全国高校野球選手権の地方大会は28日、各地で決勝があり、甲子園常連校が続々と夏の甲子園への切符をつかんだ。

 今春のセンバツ準優勝の智弁和歌山、昨夏の準優勝の関東一(東東京)が出場を決めたほか、東洋大姫路(兵庫)、天理(奈良)は、ともに同じ県内のライバル校に競り勝った。

 ◇直前のフォーム変更が奏功

 智弁和歌山は星林に2―0で零封勝ちし、2年連続28回目の出場を決めた。決勝は実りあるゲームになった。

 先発右腕の宮口龍斗投手(3年)は、初戦となった2回戦の3日前に投球フォームを2段モーションに変えたことが「うまくハマった」という。

 140キロ台中盤の直球は終盤まで威力が衰えず、決勝では相手打線を散発4安打に封じた。9回118球での完封に「公式戦で9回を投げ切るのが初めて。夏の甲子園につながる良い経験ができたかな」と納得の表情を浮かべた。

 エース右腕の渡辺颯人投手(3年)に続く存在の成長が、チームの課題だった。宮口投手自身も「春(のセンバツ)は渡辺一人にチームとして頼ってしまった」という悔しさを抱えていた。

 それだけに、今回の完封は大きな収穫だ。

 中谷仁監督は「(宮口投手が)この試合を投げ切れたら、もう一皮むけてくれるんじゃないかという期待があった。夏の甲子園で勝ち切るには、宮口という存在がどこまで覚醒できるか。信じて見守っていました」と目を細めた。

 ◇「ありがとうしかない」

 秋、春の近畿大会王者の東洋大姫路は報徳学園との約3時間に及ぶ死闘を制し、14年ぶり13回目の出場をつかんだ。

 2022年から率いる母校に夏切符をもたらした岡田龍生監督は「ありがとうしかない。本当に苦しい試合だったが、何とか粘りを見せてくれた。これまで、厳しいことを言ってきたが、それに耐えてよくやってくれた」と目を潤ませた。

 二回に桑原大礼(おおら)選手(3年)のソロ本塁打で先制。その裏に逆転を許したが、直後の三回に4連打などで再逆転した。

 またも同点とされたが、六回に4番・白鳥翔哉真(ひやま)選手(3年)の適時打などで3点を加え、リードを広げる。その後も「逆転の報徳」に追い上げを許したが、右腕の木下鷹大(ようた)投手(3年)が148球で完投。両校計22安打の乱打戦となったが、7―6で逃げ切った。

 昨秋や今春は投手力の高さが目立ったが、今夏は活発な打線が原動力となった。優勝候補に挙がったセンバツは2回戦敗退に終わったが、昨秋以降、近畿地区の公式戦では無敗のまま夏の甲子園へ挑むことになる。

 白鳥選手は「これまでは木下におんぶに抱っこで頼っていたが、今大会は援護できた。すごく良い状態で甲子園に臨める」と見据えた。

 ◇夏の勝ち方を知らなかったが…

 兵庫と同じく「ライバル対決」となった奈良大会は、天理が智弁学園に3―2で競り勝ち、3年ぶり30回目の出場を決めた。

 藤原忠理(ただまさ)監督は「接戦に持ち込むことを想定していたので、慌てずに試合を進められた。智弁学園との一戦は先輩から受け継いだ思いもあるものなので、ここで勝てたのは大きな自信になる」とうなずいた。

 先発の松村晃大投手(3年)は一回に1点を失ったが、二回の打席で失点を帳消しにする特大3ランを放って逆転。その後は相手打線に再三好機を作られたが、3投手の継投で逃げ切った。

 天理は今春のセンバツに出場したが、夏の甲子園は3年ぶり。

 主将の永末峻也選手(3年)は「自分たちは夏の勝ち方を知らない代だったが、挑戦者という気持ちを強く持った」と話し、「センバツでは初戦で負けて、甲子園には悔しい気持ちがまだ残っている」と、引き締まった表情でリベンジを誓った。

 ◇「やっとスタート地点」

 東東京大会は関東一が岩倉に快勝し、2年連続10回目の頂点に立った。

 今夏はノーシードから勝ち上がり、米沢貴光監督は「(昨夏の準優勝が)今年の3年生にはプレッシャーになったと思う。それを受け止めて、はねのけて(甲子園に)戻ることができてまずはホッとしている」と選手たちをねぎらった。

 先制を許したが、三回に入山正也選手(3年)の適時打で逆転。八回には打者9人の猛攻で4点を加え、突き放した。

 左腕・坂本慎太郎投手(3年)は、126球で完投。五回の無死満塁を無失点で切り抜けるなど、最少失点でしのいだ。四回には右越えソロ本塁打を放ち、投打「二刀流」の活躍を見せた。

 坂本投手は「目指しているのは甲子園優勝。やっとスタート地点に来られた」と力強く語った。

 ◇着実にリード広げ

 22年夏に東北勢として初めて甲子園大会を制した仙台育英(宮城)は、東北学院榴ケ岡に10―0で快勝。準優勝した23年以来2年ぶり31回目の出場を果たした。

 一回に和賀颯真選手(3年)の左前適時打で先制すると、五回以降も四死球や敵失の好機を逃さずリードを広げた。先発左腕の吉川陽大投手(3年)は、7回11奪三振の力投を見せた。

 27日は大阪桐蔭や東邦(愛知)が地方大会決勝で敗れた一方、今春のセンバツを制した横浜(神奈川)が勝つなど、「甲子園優勝経験校」で明暗が分かれていた。28日は一転、伝統校の多くが底力を見せる形となった。【深野麟之介、長宗拓弥、下河辺果歩、吉川雄飛】

毎日新聞

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