初優勝の安青錦「『おかげさまで』と伝えたい」 家族への感謝あふれ

2025/11/23 21:52 

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 ◇大相撲九州場所千秋楽(23日・福岡国際センター)

 ◇優勝決定戦○安青錦 送り投げ 豊昇龍●

 ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに母国を離れた21歳が、快挙を成し遂げた。ウクライナ出身力士初の優勝を決め、安青錦は「喜んでくれるとうれしいです。両親はずっと世話をしてくれたので、『おかげさまで』って言葉を伝えたい」。祖国と家族への感謝の思いがあふれた。

 大の里、豊昇龍の両横綱とともに11勝3敗で迎えた千秋楽で、予想外の出来事が起きた。この日の午前中に大の里が左肩のけがで休場を届け、豊昇龍が不戦勝となった。

 安青錦が本割で勝てば、優勝決定戦で豊昇龍とぶつかることが決まった。過去3戦3勝と合口の良い相手だが、「何も考えず、自分に集中した」。

 本割では大関・琴桜にまわしをとらせず、得意の内無双(うちむそう)で転がした。支度部屋に戻ると、静かに息を整えた。「ちょっと力を使う相撲だったので気合を入れ直した」

 冷静に緊張をほぐして迎えた豊昇龍との大一番で、安青錦はいつも通りに下から鋭く当たった。土俵際に追い込んで体勢を入れ替えると横綱の背後を取り、送り投げで鮮やかに倒した。

 2022年春から関西大相撲部で稽古(けいこ)を始め、22年12月に安治川部屋に研修生として入門。23年秋場所で初土俵を踏んだ。

 昨年の九州場所では新十両だった。当時、初日に勝利して感想を問われると「ずっとテレビで見ていたところ、土俵入りもできてうれしい」と初々しく笑顔で話していた。1年後、同じ土俵で初の賜杯を抱いた。

 優勝決定後のインタビューでは「(優勝が)あまり信じられなかったので……」と笑わせた。だが、「ずっと目標にしてきたことだったので、うれしかった」と素直な感想も口にした。

 来場所は大関として迎えることが濃厚だ。「うれしいですが、まだ、もう一つ上の番付があるのでそこを目指したい」。新時代の到来を予感させる快進撃だ。【林大樹】

毎日新聞

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