同郷・安青錦の背中追い 高校相撲のチュグンさん「いつか勝ちたい」

2025/12/19 16:45 

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 ウクライナ出身で長崎県立長崎鶴洋高相撲部3年のエゴール・チュグンさん(18)=長崎市=は、同胞の先輩の安青錦(21)が11月の大相撲九州場所で初優勝し大関昇進を果たしたことに勇気をもらった。1週間後に巡業で諫早市に来た安青錦からウクライナ語で「まずは基礎固めを」とアドバイスを受け、「いつか安青錦に勝って横綱になりたい」と大きな背中を追いかける。【添谷尚希】

 11月23日の大相撲千秋楽の優勝決定戦。安青錦が横綱・豊昇龍を送り投げで破り優勝を決めた瞬間、車載テレビで見ていたチュグンさんはうれしさのあまり、相撲部顧問の高橋修教諭(37)の車から飛び出しそうになった。すぐに、以前に交換していた安青錦のSNS(ネット交流サービス)のアカウントに「おめでとうございます」とメッセージを送った。

 チュグンさんはウクライナ南部のミコライウ出身。5歳で相撲を始め、8歳の時に全国大会で準優勝するなど頭角を現した。13歳の時、ウクライナの相撲の合宿で3歳上の安青錦と会い、交流が始まった。

 2022年2月にウクライナはロシアの侵攻を受けた。ロシア軍がミコライウの自宅から約10キロまで迫り、軍用のヘリコプターやドローンが飛び交った。電気は1日5時間しか使えなくなり、兄イルヤさん(36)は今も兵士として東部の前線ドネツク州に赴任している。

 チュグンさんは23年10月に来日。知人のつてを頼って長崎鶴洋高に入り、寮生活をしながら地道に相撲の稽古(けいこ)を重ねた。恵まれた体格を生かし、25年3月には全国高校選抜大会の個人無差別級で5位に。当初はまったく話せなかった日本語の勉強にも励み、今では友人たちと会話できるようになった。

 一方、安青錦は22年4月に来日。チュグンさんの来日直前の23年秋場所で初土俵を踏み、異例の速さで大関まで昇進した。その間、2人は日本で開かれた国際相撲大会などで顔を合わせ、親交を深めた。

本国も活躍注目

 安青錦の活躍はウクライナでも大きなニュースとなり、チュグンさんは25年夏にウクライナに一時帰国した際、友人から「お前はいつ、安青錦みたいな力士になれるんだ」と冗談交じりに言われた。

 チュグンさんは来春、福岡県太宰府市の九州情報大に進学し、相撲を続ける予定。将来の角界入りを目指す。

毎日新聞

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