「米国代表は複雑な思い」 五輪選手からトランプ政権への懸念相次ぐ

2026/02/10 06:30 

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 ミラノ・コルティナ冬季オリンピックの米国代表選手から、トランプ政権下での米移民・税関捜査局(ICE)による強硬な移民取り締まりへの懸念や、性的少数者(LGBTQなど)の苦境を訴える発言が相次いでいる。

 これに対し、トランプ氏らは激しく「口撃」。脅迫を受けたとしてSNSの利用を制限することを余儀なくされた選手もいる。

 「今、米国を代表するのは複雑な気持ちだ」

 開幕日の6日にあったフリースタイルスキーチームの記者会見で、男子のハンター・ヘス選手(27)は本音を吐露した。

 市民2人を射殺したICEの活動などが念頭にあるとみられ、「あまり好きではないことがたくさん起きている。多くの人が同じように感じていると思う」と主張。「国旗をまとっているからといって、米国で起きていること全てを代表しているわけではない」とも語った。

 クリストファー・リリス選手(27)もICEに言及し、「国として、全ての人の権利を尊重し、市民を愛と敬意をもって扱うことに注力すべきだ」と訴えた。「多くの場合、アスリートは政治的見解を語ることをためらう。私は米国で起きていることに胸が張り裂けそうだ」

 トランプ氏は強く反発した。

 8日に自身のSNSでヘス選手の名前を挙げて「真の負け犬」と罵倒。「(米国を代表していないというなら)代表を目指すべきではなかったし、こんな人物を応援するのは非常に難しい」と非難した。バーチェット米下院議員(共和党)もX(ツイッター)で「黙って雪で遊んでろ」と乱暴にののしった。

 一方、多様性を否定する政策を進めるトランプ政権に異議を唱えたのは、フィギュアスケート女子のアンバー・グレン選手(26)だ。2019年にバイセクシュアル(両性愛者)とパンセクシュアル(全性愛者)であることを公表している。

 4日の記者会見で「この政権下で、コミュニティー全体にとって厳しい時期が続いている。クイア(旧来の性の枠組みに当てはまらない人)だけではなく、他の多くのコミュニティーも影響を受けている」と直接的にトランプ政権を批判。「『アスリートは自分の仕事だけをして、政治については黙っていろ』と言う人が多いが、政治は私たち全員に影響する。日常生活に関わることだから、私は黙らない」と強調した。

 これらの発言に対し、SNSなどでは応援の声が寄せられた一方で「恐ろしいほどの憎悪と脅迫」を受けているという。

 グレン選手は7日、インスタグラムに「こうなることは予想していたが、失望している。心身の健康のため、しばらくSNSの利用時間を制限する」と投稿した。ただ、「自分が信じることのために声を上げることをやめるつもりはない」ともつづった。

 ミラノでは、ICEが警備を支援することに抗議するデモが開かれるなど、対米批判も見られる。6日の開会式で米国代表が入場行進した際には、出席したバンス米副大統領夫妻が大型スクリーンに映し出されるとブーイングも起きた。

 米紙ワシントン・ポストのスポーツコラムニスト、バリー・スルーガ氏は「世界が非政治的ではないのだから、五輪も非政治的ではない。五輪は、アスリートが積み重ねてきた努力を披露し、自身の考えを表現する舞台である」と指摘する。【ミラノ福永方人】

毎日新聞

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