「主将交代」にバットで応えた滋賀学園のスラッガー センバツ
◇選抜高校野球1回戦(20日、甲子園)
◇○滋賀学園5―4長崎西●
スラッガーは一人、悩んでいた。
滋賀学園の3番・吉森爽心(そうしん)は前回大会から中軸を打つ。山口達也監督から「世代を代表する打者になれる」と期待され、新チーム当初は主将も任された。それが、昨秋に極度の不振に陥った。
「自分の思っているところで打っているのに、ずれていてあっていない。結構メンタルに来ていて……」。技術よりも精神的に追い詰められていた。
体重90キロ超のがっしりした見た目から想像しづらいが、性格はおとなしく、繊細。つい自分より人のことを優先してしまう。試合でミスした選手に寄り添って話し相手になるのが常だ。
見かねた山口監督が異例の決断をした。
昨秋の滋賀大会途中、監督室に一人呼ばれた吉森は、主将を現在の藤川倖生(こうせい)に代えることを告げられた。
負担軽減という理由を説明されても、「ショックでした」。しかし、チームを引っ張る思いは変わらない。ならば、自分のバットで応えるしかないと思った。一人、動画を見直し、フォームを固めた。
迎えた初戦は長崎西に先制を許す展開。零封負けした前回大会の浦和実(埼玉)戦のように、球場全体からの圧を感じた。
「焦ることはない」と仲間を鼓舞した。
4―4で迎えた五回。無死二塁で打席が回ってきた。意識したのは力を抜くこと。そして初球を必ず振ると決めていた。
高めの速球を振り抜くと、右翼手の頭を軽々と越えた。決勝の適時三塁打に「完璧でした」。
勝利の瞬間、真っ先に好救援した伴田蒼生に駆け寄り、頭をなでた。昨年の借りは返した。「すごく気が楽になったというか、もう安心した気持ちがあります」。ようやく、ぐっすりと眠れそうだ。【生野貴紀】
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