サインは「思い切って行け」 専大松戸、三盗で活路 センバツ
◇選抜高校野球大会準決勝(29日、甲子園)
◇○大阪桐蔭3―2専大松戸(千葉)●
専大松戸の二塁走者・吉岡伸太朗は、勢いよく駆け出した。
大きな体を揺らしながら、三塁に滑り込む。砂が舞う中で、三塁塁審が両腕を大きく横に広げた。盗塁成功。果敢な挑戦が活路を開いた。
1点を追う八回1死二塁、カウントは1ボール2ストライク。失敗は許されない場面だが、吉岡には確信があった。
この回から救援した大阪桐蔭の2年生大型左腕・川本晴大(はると)を塁上から観察していた。
「ずっと本塁を見ていて、走者を警戒していない。行ける」
180センチ、95キロの「4番・捕手」で、昨秋の公式戦は11試合で0盗塁だが、決して鈍足ではない。
むしろ、「警戒されないので盗塁しやすい」。虚を突かれた大阪桐蔭の捕手・藤田大翔(ひろと)を「準備不足だった」と嘆かせた。
2死後、7番・苅部礼翔(らいと)の左越え適時二塁打で同点のホームを踏み、拳を握った。
専大松戸は走塁にこだわるチームだ。
例年、投手力が高く、小差の展開になりやすいため、効果的な得点を奪う策を模索してきた。練習試合から相手投手の隙(すき)を見つけることを習慣づけ、積極的に次の塁を狙ってきた。
77歳の持丸修一監督は消極的なプレーはたしなめるが、前向きな失敗には「気にするな。どんどん行け」と背中を押す。吉岡によると、三塁に盗塁した時のサインは「行けるなら行け、思い切って行け」だった。
2015年夏に春夏通じて初めて甲子園の土を踏み、春は今回が3回目。過去最高の8強を上回り、高校野球界をけん引する大阪桐蔭とも互角の勝負を演じた。
階段を着実に上がっているからこそ、課題も明確だ。
持丸監督は足でかき回すのは狙い通りとしつつ、「もうちょっと早い回でできていたらよかった。分かっていてもできなかったのは経験の差かな」。攻撃で3者凡退で終わったのは六回だけ。走者は出したが、横綱の牙城を崩すには至らなかった。基盤とする守りでもほころびが出た。
これまでの歩みへの手応えと、これからやるべきこと。大きな収穫を手にした春だった。【石川裕士】
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