フジHD金光社長ら退任へ 役員の定年制導入など再発防止策を提出

2025/04/30 22:23 

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 元タレントの中居正広氏がフジテレビのアナウンサーだった女性に性暴力を加えた問題で、親会社のフジ・メディア・ホールディングス(HD)は4月30日、HDの金光修社長(70)と社外取締役3人が、6月開催予定の株主総会をもって退任すると発表した。

 HDはこの日、2025年3月期の連結業績予想を大幅に下方修正し、最終(当期)損益が201億円の赤字に転落する見込みであるとも発表。通期決算で最終損益が赤字になれば、08年に認定放送持ち株会社に移行して以降、初となる。1月公表の見通しでは、前期比73・6%減の98億円の黒字と予想していたが、中居氏の問題で大量のCMスポンサー離れが起きたことに加え、フジが保有する固定資産の価値下落に伴う損失約260億円を計上することなどの影響を受けた。

 中居氏を巡る問題について、総務省は4月3日、厳重注意の行政指導を実施し、再発防止策の具体的な内容の報告を4月中に行うよう求めていた。フジとHDは30日、代表権のある取締役は70歳、それ以外の常勤取締役と執行役員は65歳で定年とし、社外取締役は在任期間の上限を8年とすることなどを盛り込んだ方策を同省へ報告。その後、金光社長は記者会見を開き「この取締役の定年に関する諸規定を受け、私は6月の株主総会終結をもって任期満了で退任する」と述べた。フジに長年君臨し、フジとHDの取締役相談役を務めていた日枝久氏(87)が社長や会長など役員人事に強い影響力を発揮していたため、金光氏は、役員定年制の徹底策などについて「そういうこと(への反省)も背景にある」と語った。

 同社は3月27日、日枝氏退任の他、株主総会で金光氏が代表権のないHD会長に就任するなどの新役員体制案を発表。しかし、大株主である米投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」から、日枝氏の影響があったとして、金光氏らの交代を求められていた。

 フジとフジHDは4月30日、社外取締役である島谷能成・東宝会長、斎藤清人・文化放送社長、茂木友三郎・キッコーマン名誉会長の3人から申し出があり、退任するとも発表した。3月27日に発表された、HD社長を清水賢治フジ社長が6月以降に兼ねる案は変更はない。

 この他、フジは、日枝氏が影響力を発揮した閉鎖的な役員指名の在り方について、客観性や透明性などを確保する方策や、フジの編成・バラエティー部門を解体・再編してアナウンス室を独立させるといった組織改革の方針なども発表した。【井上知大、町野幸】

 ◇フジテレビ再生・改革への具体策骨子

・「人権ファースト」を徹底する組織作り

・人権侵害やハラスメント被害者への外部弁護士窓口の新設

・処分決定に外部専門家の知見を入れ、コンプライアンス違反へ厳正対応

・「リスク評価・対応チーム」の新設など危機やリスクを減らす仕組みの導入

・編成・バラエティー部門を解体し再編。アナウンス室は編成・制作部門から独立へ

・役員定年制の厳格化や在任期間の上限を設け、役員指名における客観性や透明性を確保

・女性取締役比率3割以上の維持、女性リーダー育成、若手登用による人材の多様性実現

・「楽しくなければテレビじゃない」から脱却し公共性と責任を再認識

毎日新聞

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