日産、神奈川2工場の閉鎖「決まっていない」 幹部否定も地元に不安

2025/05/19 20:12 

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 経営再建中の日産自動車が、神奈川県内の追浜工場(横須賀市)と子会社「日産車体」の湘南工場(平塚市)について、閉鎖を含め検討していることが明らかになった。報道を受け、19日には同社の幹部が横須賀市役所などを訪れ、報道を否定するなど、情報が錯綜(さくそう)する中、県内の政財界からはさまざまな反応があった。【福沢光一、澤圭一郎、蓬田正志】

 同日、日産経営再建プロジェクトを担当する執行職の松山昌史氏らが、横須賀市役所や県庁を訪問。面会した上地克明横須賀市長は「『報道は臆測に基づくもので日産から発表した情報ではない』との説明を受けた」と語った。

 上地市長によると、日産側から「インドとアルゼンチンの工場閉鎖は決まっているが、国内工場で確定していることは何もない」との話があったという。その上で、工場の今後について、市と情報共有することを同社が約束したことを明らかにした。

 一方、県は緊急会議を開催。黒岩祐治知事は「県における日産の存在感は非常に大きい。本当に閉鎖されると雇用、経済に与える影響は絶大で、さまざまな角度からできる支援を検討したい」と危機感をあらわにした。

 県によると、日産と取引がある企業は県内で1700社以上に上る。会議では、工場が閉鎖された場合、相談窓口設置や資金繰り支援などの対応をすることを確認。終了後、黒岩知事は報道陣に「最悪の場合を想定しながら、どんなことができるのか検討した」と語り、今後は国や横須賀市などと連携を強化する考えも示した。

 また、平塚市の落合克宏市長は「日産車体から何も聞いていないので、今後の動向を注視していきたい」とのコメントを出した。

 ◇地元「ついに来たか」「打撃大きい」

 閉鎖を検討している追浜工場は、敷地面積約169万9000平方メートル。1961年に操業を開始し、現在は小型車「ノート」を生産し、年間の生産能力は24万台に達する。従業員は総合研究所、追浜試験場、追浜専用埠頭(ふとう)を含む約3900人(2024年10月31日現在)。

 横須賀商工会議所の平松広司会頭は「正式発表はないものの、もし追浜工場が閉鎖されれば地域経済への打撃は大きい」と心配そうな声で話した。地元の商店街組合「追浜商盛会」(加盟数38)の織田俊美代表理事は「カルロス・ゴーン氏の社長時代にも地元では閉鎖のうわさはあり、『ついに来たか』という感じだ」と語る。

 一方、日産車体の湘南工場がある平塚市でも懸念の声が上がった。平塚商工会議所の常盤卓嗣会頭は「もし事実であるとすればかなりの打撃。戦後、市の復興は日産車体が中心になって取り組んできた」と振り返る。その上で、「自動車産業は関連企業の裾野が広く、影響は多岐にわたる。市や金融機関とも協議をする必要があるだろう」と述べた。

 日産車体は従業員数が1786人(25年3月末現在)。湘南工場は、車体、塗装、組み立ての生産工程を持ち、年間15万台の生産能力を持つ。

毎日新聞

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