<金利ある世界>日銀、追加利上げへ 30年ぶり0.75%に 18日から決定会合
日銀は18、19日に開く金融政策決定会合で、追加利上げする方針だ。トランプ米政権の大規模関税の日本経済への打撃が想定より小さく、企業が来年も十分な賃上げを続ける見通しとなったため。円安進行による物価上昇(インフレ)を食い止める狙いもにじませ、物価高対策に苦慮する高市早苗政権との「協調」を演出する。
日銀は2024年3月のマイナス金利解除以降、3回の利上げを実施しており、現在の政策金利は0・5%程度。実際に追加利上げすれば0・75%程度と、1995年8月(当時は公定歩合)以来、約30年ぶりの高水準となる。
日銀は今年1月会合で利上げしたのを最後に、6会合連続で政策金利を据え置き、トランプ関税の影響を見極めてきた。自動車産業などに打撃を与えているものの、企業収益への悪影響は当初予想に比べ小さいとの見方が強まっている。利上げの是非を判断するうえで最も重視する企業の賃上げについても、全国の日銀支店を通じたこれまでの聞き取り調査で「力強い水準を確保できる」との感触を得ている。
外国為替市場で円が売られて足元で一時、1ドル=157円台まで円安が進んだことも、利上げを後押ししている。円安進行が輸入物価の上昇を招き、食品価格の高騰などのインフレ圧力になっているためだ。
金融緩和を志向する「リフレ派」の高市政権や与党には、利上げに否定的な声もある。だが、国民生活を圧迫するインフレは高市政権が最優先で取り組む課題で、円安食い止めの効果がある利上げを容認する方向だ。
植田和男総裁は1日、12月会合で「利上げの是非について適切に判断したい」と明言。「景気にブレーキをかけるものではない」とも説明し、利上げ否定派に理解を求めた。市場では、これらの発言が12月会合での追加利上げに向けた「地ならし」との見方が広がっていた。
日銀は景気を熱しも冷ましもしない「中立金利」を1~2・5%の範囲にあると推計。12月会合で利上げしても政策金利は中立金利の下限である1%を下回っており、依然として金融緩和の状態にあるとの考えだ。
日銀は中立金利に到達するまで0・25%刻みの利上げを続ける方針。植田氏は「中立金利までどれくらい距離があるのかという点に関しては、次回利上げをすることがあれば、その時点での考えをもう少しはっきりと明示させていただければと思う」と述べており、市場では12月会合後の植田氏の記者会見に注目が集まっている。【古屋敷尚子、大久保渉】
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