歌舞伎に「脈々丸(みゃくみゃくまる)」登場 安羅仁の魔法の絨毯、愛之助が十一役早替りも

2025/05/14 21:55 

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大阪松竹座『薫風歌舞伎特別公演』

 大阪・関西万博開催記念を銘打った大阪松竹座『薫風歌舞伎特別公演』が、11日に幕を開けた。ミャクミャクもロビーで出迎えるなか、舞台上には「脈々丸」が登場するなど、外国人や歌舞伎初心者にも気軽に楽しんでもらえる演目の中に、歌舞伎の醍醐味があふれた。

【写真多数】魔法の絨毯に乗った安羅仁と茉莉花姫、愛之助の十一役早替りなど

 第一部『今昔歌舞伎草紙』は、市川青虎の口上に始まり、日本舞踊家たちが、歌舞伎の発祥とされる出雲の阿国一座による“歌舞伎踊り”から、歌舞伎の変遷を踊り継いだ。上方歌舞伎を代表して 伊左衛門(中村扇雀)と夕霧(中村壱太郎)による 『廓文章 吉田屋』の一場面のほか、江戸歌舞伎を代表した『お祭り』では、中村鴈治郎、片岡愛之助、市川中車が獅子の姿となった鳶頭を勤め、最後は豪快な毛振りで客席 を盛り上げた。

 続いて『脈々奇書異聞(みゃくみゃくきしょいぶん) 夢窓西遊記』は、「西遊記」を安土桃山時代の大坂に置き換えた新作歌舞伎。大坂城の城主となった孫悟空(中村橋之助)が、この世を魔界に変えようと企む大天狗(市川笑三郎) と茶々姫実は九尾の狐(市川笑也)に操られ、そんな悟空を連れ帰ろうとする猪八戒(中村福之助)、沙悟浄(中村歌之助)らと戦う。「西遊記」おなじみの小道具も登場しての豪快な立廻りの末、三蔵法師(片岡愛之助)により悟空は善心に立ち返り、夢洲に生じた産土神として登場した脈々丸(みゃくみゃくまる=中村亀鶴)が客席を沸かせた。

 第二部は「アラジンと魔法のランプ」の原作をもとにした新作『千夜一夜物語
荒神之巻』。幕開きの音楽は、カール・ニールセンの「アラジン組曲」より祝祭行進曲。安羅仁(あらじん=中村虎之介)と茉莉花姫(まりかひめ=中村壱太郎)の恋物語に加え、洋燈ランプの魔神(市川猿弥)や指輪の精(市川笑三郎)、さらに偽物の洋燈ランプの魔神たち(中村鴈治郎ほか)とのやりとりが笑いを誘った。一方、安羅仁の伯父を騙った妖術使いの摩拘吏部(まくりぶ=市川中車)が突如、二階席のバルコニーに現れて客席を驚かせたかと思うと、「骨寄せ」やスッポンからの登場、さらに面明りとともに花道を引っ込むなど、歌舞伎ならではの演出で存分に魅了。幕切れでは、キラキラと紙吹雪の舞う中、魔法の絨毯に乗った安羅仁と茉莉花姫に、大きな拍手が贈られた。

 第三部は片岡愛之助が十一役早替り、宙乗り、本水での立廻りを勤める『鯉つかみ』。大百足から始まり、それを退治する俵秀郷、鯉の皇子(金鯉)、悪役の余呉左衛門、奴や女方(釣家奥方漣)まで、次から次へと違う役で登場する愛之助に客席からは大きな拍手と時に歓声。大詰の「琵琶湖中鯉退治の場」では、湖を模した大きな水槽に宙返りで飛び込み、大きな鯉と、客席まで水を飛ばすほどの大立廻りで、その迫力に客席は大興奮だった。

 大阪・関西万博開催記念『薫風歌舞伎特別公演』は、25日に千穐楽を迎える。
ORICON NEWS

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