『花より男子』の漫画家・神尾葉子が描く 恋のきらめきの、その先へ――初アニメ『プリズム輪舞…

2026/01/22 12:45 

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Netflixシリーズ『プリズム輪舞曲』原作・キャラクター原案・脚本を手がける神尾葉子(2025年12月16日開催のトークイベントにて撮影)

 恋愛マンガの金字塔『花より男子』をはじめ、数々の名作を世に送り出してきた漫画家・神尾葉子が、初めてアニメーション作品の原作・脚本に挑んだ。動画配信サービス「Netflix」で独占配信中の『プリズム輪舞曲』は、恋のきらめきにとどまらず、その先にある人生の選択までを描いた意欲作だ。創作の原点から制作現場での実感、キャラクターに託した思いまで、本作への思いを語ってもらった。

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 完全新作アニメーションシリーズとして誕生した『プリズム輪舞曲』。企画が動き出したのは、まさにコロナ禍の真っただ中だったという。

 「世の中全体が疑心暗鬼で、すごく暗い空気だったんです。そんな時代だからこそ、エンターテインメントが担う役割は大きいと感じました。とにかく、観ている方が元気になれる主人公にしたい──そこが出発点でした」

 櫻井大樹プロデューサーから提示されたのは、「明治時代、若い女性が一人で海外に渡り、絵を学ぶ物語」というアイデアだった。

 「当初はフランスが舞台だったんですが、私が“貴族との恋愛を書きたい”とお願いして、イギリスになりました」

 貴族との恋愛は、神尾がいつか描いてみたいテーマのひとつでもあった。

 「『高慢と偏見』(ジェイン・オースティンの長編小説)が好きで、身分違いの恋愛はそれだけでドラマになると思いました」

 本作の舞台は1900年代初頭のロンドン。画家を志す日本人の少女・一条院りり(CV:種崎敦美※崎=たつさき)は、初めての海外、夢の美術留学に胸を躍らせていた。両親と交わした約束は「半年以内に学院で1位を取れなければ即帰国」。編入初日から、りりはやる気に燃えていた。

 そんな彼女が出会うのが、大貴族の息子で天才画学生、そして少々マイペースでトラブルメーカーなキット・チャーチ(CV:内山昂輝)だ。ライバル心を燃やすりりと、絵にしか興味がなかったキット。だが、絵がうまくなりたいというりりの真っ直ぐな想いに、キットは次第に共鳴していく。

 前向きで好奇心旺盛、少しおっちょこちょいな留学生・りりと、圧倒的な才能を持ちながら生活力は皆無な大貴族・キット。絵画への情熱以外、共通点のない二人の関係はどうなっていくのか――。

 物語には、りり、キットとともにセント・トーマス美術学院で学ぶ日本人留学生の小早川新之助(CV:梶裕貴)、りりの下宿仲間でもあるドロシー・ブラウン(CV:潘めぐみ)、優等生のピーター・アンソニー(CV:坂田将吾)、アイルランドの準貴族の三男ジョフリー・オブライエン(CV:阿座上洋平)、さらにはキットの許嫁キャサリン・アスター(CV:上坂すみれ)ら、多彩なキャラクターが集う。その人物配置には、代表作『花より男子』を想起させる部分もあるが、それは意図的なものだった。

 「そもそも“少女マンガ的なアニメーションを作りたい”というお話でもあったので、少女マンガといえば、主人公の女の子の周りに魅力的な男の子たちがいる――その王道は、やっぱり外せないと思いました」

 なかでも神尾が最も気を配ったのは、主人公・りりの描き方だった。

 「元気な主人公だからこそ、傍若無人にならないように。どんな状況でも筋を通して生きることを大切にしました。ここは制作チーム全員で、一番話し合った部分です」

■初めて向き合った“チームで作る物語”

 神尾にとって、アニメーション作品への本格的な関与は今回が初めてだった。漫画制作とはまったく異なる現場に、驚きの連続だったという。

 「漫画は基本的に一人で描くものですが、アニメーションは本当にたくさんの人の手で作られている。頭では分かっていたつもりでも、実際に関わると“とてつもないプロジェクトだな”と実感しました」

 アニメーション監督は、映画『キル・ビル』のアニメパートを手がけ、『B: The Beginning』では原作・監督を務めた中澤一登。アニメーション制作は『進撃の巨人』、『ムーンライズ』のWIT STUDIO。神尾は制作現場で多くを学びながら、“チームで物語を作る”という初めての感覚に向き合っていった。

 「『花より男子』がアニメ化されるときは、原作をお渡しして、あとはアニメ側にお任せする形でした。今回は、まったく違いましたね」

 実際、神尾は制作のかなり深い部分まで関わっている。20話全ての脚本執筆に始まり、全キャラクター原案、全話の絵コンテチェック、全話のアフレコ立ち会いなど。

 一方で、完成した映像を観て、アニメーションならではの表現に驚かされることもあった。それは、終盤で用いられたグレースケールの演出だ。ヒロインの心情を“色を失った世界”で描き、アニメならではの表現として強烈な印象を残す。

 「脚本では、“一条院りりが色を失ってしまった”と書いただけなんです。それをグレースケールで表現するという判断は、監督やWIT STUDIOの皆さんのアイデアでした。その後の色を取り戻した瞬間の美しさは、本当に素晴らしかったです。単にカラーをグレースケールに変換したのではなく、最初からグレースケールで描いたと聞いて、どれだけ手間をかけてくださったのかと……。制作陣の本気を感じました」

 本作が画学生の物語であったことも制作スタッフの心を強くつかんだ、と櫻井プロデューサーは語る。

 「間違いなく、神尾先生ご自身の気持ちも入っていますし、中澤監督の気持ちも入っている。おふたりとも“絵を描く人”ですから。だから、この物語は他人事じゃない。スタッフみんなが“これは俺たちの物語だ”と思っていた。それが、一丸となれた理由だと思います。先生が、うまく“接続点”を見つけてくださった」

 本作の軸となる“恋愛”は普遍的なものだが、その先にある人生の選択まで描く群像劇へと進化できたことに、神尾も大きな手応えを感じている。

 「『プリズム輪舞曲』では、夢を追う人、あきらめる人、それぞれの人生を描けたことがうれしかった。才能がないから夢をあきらめる、という選択をするキャラクターがいることで、物語にリアリティが生まれました。恋愛だけでなく、人生そのものを描けたと思います。少女マンガではなかなか踏み込めない領域に挑戦できたのは、Netflixのオリジナルアニメーション企画だからこそでした」

 1986年に漫画家デビューして以来、今年は40年の節目。長きにわたる創作活動を支える原動力はどこから来るのか。そう尋ねると、神尾は少し照れたように笑いながら語った。

 「体力は正直ないんです(笑)。でも、作ること自体が好きなんですよね。物語を考えたり、何かを創造したり。子どもの頃からずっとそれが好きでした。誰に何を言われようと、自分の好きなことを続ける。そこは、本作のりりと重なる部分かもしれません。小説を読んだり、映画を観たり、創作物に触れて、それを自分なりにアウトプットする。その繰り返しが、ライフワークになっている気がします」

 最後に、『プリズム輪舞曲』の世界配信への思いを語ってもらった。

 「日本でも海外でも、読者の反応は驚くほど同じなんです。恋愛のときめきは、国や文化を超えるもの。世界の方々がどんなふうに受け取ってくださるのか、とても楽しみにしています」


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