「究極」でも全容見えぬ米NATO枠組み合意、欧州側も一定の譲歩か

2026/01/22 11:16 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 トランプ米大統領は21日、米国によるデンマーク自治領グリーンランドの「領有」に反対する英仏独など欧州8カ国に対し、2月から課すとしていた追加関税を見送ると表明した。スイス東部ダボスで北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長と会談後、自身のソーシャルメディアで明らかにした。

 トランプ氏は投稿で、グリーンランドを含む北極圏全体に関する将来の枠組みを構築することで合意したと説明した。ルッテ氏との会談は「非常に生産的」だったとし、協議が進めば「米国と全てのNATO加盟国にとって素晴らしいものになる」と述べた。米国が構想する新たなミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」を巡って、追加協議が行われるとしている。

 トランプ氏は、交渉の責任者にバンス副大統領、ルビオ国務長官、ウィットコフ中東担当特使を充てる考えを示した。記者団に対し「究極の長期合意だ」と述べ、安全保障や鉱物資源面での利点を強調した。

 トランプ氏は、ルッテ氏との会談に先立ち、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で演説した。グリーンランドの戦略的重要性を指摘し、「米国以外に、いかなる国もその安全を確保できない」と主張。武力行使の可能性は否定する一方、関係国に対し速やかな交渉開始を求めた。

 また、欧州防衛に対する米国の貢献を強調した上で、グリーンランドの領有について「数十年にわたり与えてきたことに比べれば、ごくわずかな要求に過ぎない」とも主張した。

 米ニュースサイト「アクシオス」によると、合意した枠組みには、デンマークの主権は維持される一方、米国とデンマークが1951年に締結した防衛協定の見直しや、グリーンランドの安全保障強化などが盛り込まれているという。NATOの報道担当者は、今後の交渉は「ロシアや中国がグリーンランドに軍事的、経済的な足掛かりを得ないようにすること」に焦点が置かれるとしている。

 合意の全容は明らかになっていないが、欧州側も一定の譲歩を示した可能性がある。ルッテ氏は21日、トランプ氏との会談を前に、グリーンランドを巡る米欧関係について「緊張があることは承知している」と述べ、水面下で解決に向けた協議を進めていることを明らかにしていた。

 欧州側には、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援を巡り、米国との関係悪化を避けたい事情がある。停戦後のロシアによる再侵攻を防ぐ「安全の保証」への米国の関与や、米国のウクライナ支援が滞れば、欧州全体の安全保障にも影響しかねないためだ。

 ルッテ氏は「いま最も重要な問題は、グリーンランドではなくウクライナだ」と強調した。その上で、北極圏におけるNATOの防衛体制強化を訴えるトランプ氏の立場を支持する姿勢を明確にしていた。【ワシントン浅川大樹、金寿英、ブリュッセル宮川裕章】

毎日新聞

国際

国際一覧>

写真ニュース