被災地に行くことを迷う人へ 能登高生が「ノトイクツアー」企画

2026/01/22 10:45 

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 2025年11月23日早朝、石川県能登町宇出津港。立山連峰を背に富山湾から朝日が昇ると、釣り糸を垂れる若者から歓声があがった。「こんな絶景、ここでしか見られない」「また、アジやイカ釣りに挑戦したい」。地元の同県立能登高2年生が地域課題の解決に向けて総合的な探究の時間で企画、運営した「ノトイクツアー」の一コマだ。

 ツアーには県内外の高校、大学生15人が参加。同22日は、同県輪島市町野町の仮設住宅で写真洗浄を体験。夜はツアーに協力した災害ボランティアのメンバーも加わってバーベキュー(BBQ)で交流した。アンケートに答えた12人全員が「もう一度(何度でも)能登に来たい」と答え、交流人口拡大に一歩を記した。

 ◇「交流人口を増やしたい」

 ツアーを企画した理由を聞いた。24年の能登半島地震で弟が犠牲になった能登高2年、森泰一郎(たいちろう)さん(17)は「倒壊した家から家族を助け出してくれたり、中学校での避難生活を支えてくれたりした消防団員や近所の人たちの温かさを実感した。松波人形キリコ祭りなどで一緒に活動してきた町の人たちで、その魅力に触れてもらいたい」。

 境谷健太郎さん(17)も地元の「あばれ祭り」で太鼓をたたいたり、キリコを担いだりしてきた。ただ、手料理で祭りに来た人をもてなす「よばれ」を開催できるのは、横町町内会で境谷さん宅だけになった。「魅力のある能登の祭りを通じて、一人でも多く交流人口を増やしたい」と語る。

 ツアーは、被災地の能登に行って良いか迷う高校、大学生世代をターゲットにした。森さんは「1人が100回、能登に来てくれるように」と誰もが参加しやすい写真洗浄体験を提案。境谷さんは「あの人にもう一度会いたいを作る」を目標に、宇出津港岸壁で楽しむ釣りを盛り込んだ。

 参加者の評判は上々だった。大阪府の高校2年、上村百代さん(17)は小学生時、最大震度6弱の大阪北部地震(18年6月)を経験。「大阪では約1週間後に日常生活に戻った。能登に来てみると2年近くがたっても災害が続いていることを実感した」。一方、「自然の豊かさ、出会った人の優しさは宝物になった」と笑顔だった。

 教員志望の横浜市の大学3年、浜田愛美さん(20)は3度、能登に災害ボランティアで来県し「復興の中で地域の人、子供たちの心情の変化を見たいと思って参加した」。BBQの時間に森さんから被災体験を聞いた。「子供たちの日常に関わり、心の変化に寄り添う人が必要だと思った。自分にできることを考えたい」と話した。

 能登高生のツアーの振り返りでは、当初の狙いだった「復興に携わる人の話を通じて震災を自分事として考える」「自分たちだからこそできることを考え共有し行動できる場を作る」ことが乏しかったと分析した。

 ◇次回は1月24、25日

 次回のツアーは1月24、25日に予定。11月に好評だった、ご飯を一緒に食べる時間や肉体労働ではないボランティア、釣りに加え、新たに町の人と交流を深める「仮設住宅での除雪」を予定する。

 震災からの復旧・復興が進まない町では、高齢、過疎化はいや応なく進む。「地域の防災力を高める。避難訓練の充実や、普段からお互いを支え合う地域コミュニティーを強化する。その上で、日本中の高校生が防災を学び合えるスーパー防災ハイスクールを能登町で開催できたら」。境谷さんが抱く次の目標だ。【中尾卓英】

毎日新聞

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