韓国捜査当局、尹大統領の逮捕状を請求 内乱容疑 不訴追特権も例外

2024/12/30 10:57 

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 韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領による「非常戒厳」の宣布を巡り、高官犯罪捜査庁(高捜庁)は30日未明、尹氏の逮捕状をソウル西部地方裁判所に請求した。聯合ニュースによると、内乱と職権乱用の疑いがもたれている。韓国の現職大統領への逮捕状請求は初めて。大統領は憲法で不訴追特権が保障されているが、内乱罪は例外となっている。

 高捜庁は尹氏による戒厳令の宣布について「職権を乱用し、憲法秩序を乱す目的で暴動を起こした」疑いがあるとし、尹氏を「内乱の首謀者」とみている。法務省は尹氏を出国禁止にしている。高捜庁はこれまでに3度、出頭を要請したが、尹氏が拒否し続けたため、逮捕状の請求に踏み切った。

 検察は、戒厳令を尹氏に進言した金龍顕(キムヨンヒョン)前国防相の逮捕状を検察が申請した際、尹氏と金氏が「共謀した」と記した。裁判所はこれを認め、金氏は10日に逮捕された。27日には起訴されている。このため、裁判所が尹氏の逮捕についても認める可能性もあるとみられている。

 一方、尹氏の代理人の尹甲根(ユンカプグン)弁護士は30日、逮捕令状に対する意見書をソウル西部地裁に提出したと明らかにした。「高捜庁には内乱罪事件についての捜査権がない」として、逮捕請求の却下を求める内容だという。

 国会は14日、戒厳令の宣布は違憲だとして尹氏に対する弾劾訴追案を可決。尹氏は職務停止に追い込まれたが、警護などの特権は維持。ソウル市内の高台にある大統領官邸で生活している。

 尹氏側は、大統領府への家宅捜索について軍事機密があることを理由に拒否したため、高捜庁は、大統領警護庁などが尹氏の逮捕阻止を試みる懸念もあると見て、逮捕を阻めば公務執行妨害罪に当たる可能性があるとけん制している。

 尹氏は12日の談話で、「弾劾しようが捜査しようが、私はこれに堂々と立ち向かう」と徹底抗戦する意思を表明。「野党の議会独裁に対抗し、韓国の自由民主主義と憲政秩序を守ろうとした」と述べ、戒厳令宣布を正当化していた。

 尹氏は3日夜、政府提出の予算案の一部を減額したり、検察官らを繰り返し弾劾したりする野党の行為を「内乱を企てる反国家行為だ」と非難し、戒厳令を出した。特殊部隊の一部が国会議事堂に乱入したが、国会は混乱の中で戒厳令の解除を要求する決議案を可決。憲法に基づき大統領は従わねばならず、尹氏は4日未明に戒厳令を解除した。

 国会の特殊部隊を指揮する軍幹部らは、尹氏から議員を議場から排除するよう電話で指示されたと証言している。高捜庁と共に捜査をする警察は尹氏の携帯電話の通話履歴を押収し、解析を進めていた。

 弾劾訴追を巡っては、憲法裁判所が国会での弾劾案可決から180日以内にその是非を判断する。憲法裁が妥当だと判断すれば、尹氏は失職。60日以内に後任を決める大統領選が実施される。

 韓国では過去に、全斗煥、盧泰愚、朴槿恵、李明博の各氏が大統領退任後に身柄を拘束され、実刑判決を受けている。【ソウル日下部元美】

毎日新聞

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