不倫口止め裁判 判事「幸運をお祈りします」 トランプ氏は反応せず

2025/01/11 09:37 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 トランプ次期米大統領が有罪となった不倫口止め裁判で、刑執行の免除を言い渡したニューヨーク州の裁判所は10日、法廷内の音声を公開した。

 「本当にひどい経験だった。ニューヨークの司法制度にとって大きな後退だ」。米南部フロリダ州の私邸「マララーゴ」から弁護人と共にオンラインで出廷したトランプ氏は、量刑言い渡し前の最終意見陳述をそう切り出した。

 トランプ氏は裁判について「政治的対立」を理由に「不公正な扱いを受けた」と主張し、「私は完全に無実だ。何も悪いことはしていない」と訴えた。陳述は約6分で、一連の裁判でトランプ氏が法廷内で発言したのは初めてだった。

 トランプ氏は昨年5月に陪審から有罪評決を受けた後も、大統領の公務に関わる行為には免責が認められるなどと主張し、裁判の中止や量刑言い渡しの回避を模索してきた。

 これに対し、検察側はこの日の意見陳述で、トランプ氏の有罪を支持する「圧倒的な証拠がある」と強調。「刑事司法制度に対する社会的な評価にダメージを与え続けた」と批判した。

 州裁判所のマーチャン判事は、冒頭で「前例のないほどメディアの注目を集めた」事件だったと振り返った。その上で、トランプ氏の主張について「法的に特別な保護は大統領の職に与えられるものであって、その職にある人物に与えられるわけではない」とし、「陪審員の評決を取り消す力もない」と述べた。さらに「この国の最高職を侵害することなく、有罪を認める唯一の合法的な判断は、無条件の刑執行の免除であると決定した」と結んだ。

 言い渡しを終えると、マーチャン判事はトランプ氏に「2期目の就任にあたり、幸運をお祈りします」と語りかけた。トランプ氏は反応しなかった。

 米メディアは、条件なしに刑の執行を免除する異例の量刑について、有罪評決の維持を可能にするための象徴的な判断だと報じている。トランプ氏は米国で、刑事裁判で有罪となった人物として初めて大統領に就任する見通しだ。

 米紙ニューヨーク・タイムズの分析によると、ニューヨーク市マンハッタン地区で、過去10年にトランプ氏と同じ重罪扱いの業務記録改ざんの罪に問われ、有罪評決を受けた被告のうち、3分の1以上が禁錮刑を言い渡されていた。残りは保護観察や罰金などで、無条件で執行が免除された例はトランプ氏以外になかったという。【ニューヨーク八田浩輔】

毎日新聞

国際

国際一覧>