「トランプ氏はナルシシストの極右」 南ア特使、過去の発言波紋

2025/04/18 08:30 

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 トランプ米政権と南アフリカの関係が悪化する中、米国担当特使に任命された南アの元副財務相が過去にトランプ米大統領を「ナルシシストの極右の政治家」と批判していたことが波紋を呼んでいる。AP通信が報じた。南アの前駐米大使がトランプ政権批判を理由に国外追放されたのに続いてトラブルが浮上。トランプ氏が南アで11月に開催される主要20カ国・地域(G20)首脳会議を欠席するとの見方も出ている。

 APによると、南アのラマポーザ大統領は14日、トランプ政権との関係改善に向けて、ムセビシ・ジョナス元副財務相を米国担当特使に任命した。

 しかし、ジョナス氏は、2020年の米大統領選で当時現職だったトランプ氏が敗れた後、「(対立候補の)バイデン氏が人種差別的で同性愛嫌悪のトランプ氏に勝利した」「なぜナルシシストの極右政治家が世界最大の経済・軍事大国を率いることになったのか、我々はよく考える必要がある」などと講演で語ったことがあった。

 ジョナス氏は特使任命後の英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで「(発言した)当時とは状況が変化したことは十分理解されるだろう。発言が問題になるとは思わない」と釈明。約4年半前の公職から離れていた当時の発言が、特使としての職務の障害にはならないとの考えを示した。

 ただ、トランプ政権は高官人事にあたって過去の言動を吟味するなど「敵味方」を区別する傾向が強い。

 南アの駐米大使だったエブラヒム・ラスール氏はオンラインイベントで「トランプ氏は(白人)至上主義を主導している」などと発言したことが問題視され、3月に「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」として国外退去を求められた。

 ジョナス氏はラスール氏の追放を受けて14日に任命されたばかりだが、過去のトランプ氏への批判が原因で、「相互関税」などを巡る折衝が円滑に進まない可能性もある。

 米国と南アの関係は、トランプ政権が南アの土地改革を批判したことで悪化している。

 南アではアパルトヘイト(人種隔離)時代の黒人差別の影響で、土地所有を巡る人種間格差がある。南ア政府は国が土地を収用しやすくする施策を推進しているが、トランプ氏は「南アが白人農家の土地を収奪している」と主張。2月には南アの「反白人的かつ反米的な政策」を理由に全ての対南ア資金援助を停止する大統領令を発した。トランプ氏の国内での支持層が白人中心であることも、こうした対応の背景にあるとみられる。

 トランプ政権の閣僚は、南アが議長国を務めるG20の閣僚級会合を相次いで欠席している。トランプ氏は自らの交流サイト(SNS)に「G20に参加するために訪問したい場所だろうか? 私はそうは思わない」と投稿し、首脳会議の不参加を示唆している。【古川幸奈】

毎日新聞

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