国連本部業務、ナイロビに移転案 コスト削減で 米圧力も背景か

2025/05/13 07:32 

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 国連のグテレス事務総長は12日、米ニューヨークの本部やスイス・ジュネーブの欧州本部の業務を、コスト削減のためケニアのナイロビ事務所に移転するなどの改革案を加盟国に示した。人員削減も視野に入れる。今年創設80年を迎える国連は、組織の「効率化」などを掲げた作業部会を設けて改革に乗り出している。グテレス氏は「不確実性の時代に組織を強化するための取り組みだ」と述べ、支持を呼びかけた。

 ニューヨークで開いた非公式会合で、作業部会が検討中の内容を報告した。グテレス氏は、維持コストの高い都市にある機能の移転や、業務が重複する部局の再編は優先分野と説明。ニューヨークとジュネーブの事務局機能を「コストの安い既存の拠点に移すか、さもなければ削減もしくは廃止」の検討が求められていると明言した。また、政治・平和構築局(DPPA)と平和活動局(DPO)の重複を解消すれば、両部門の職員の2割削減も可能だとした。

 ナイロビ事務所の敷地は世界にある国連の拠点で最も広く、「アフリカが見捨てられている」という懸念の払拭(ふっしょく)にもつながる。グテレス氏は「ニューヨークにあるすべてをナイロビに移すというわけではない。移転はケース・バイ・ケースだ」とも述べた。

 国連外交筋は、厳しい財政状況に対処するため、「最大の資金拠出国である米国のトランプ政権による圧力とそれに対する不安が背景にある」と語る。

 3月に発足した作業部会は①現体制における効率化と改善可能な点の洗い出し②加盟国の決定(マンデート)に基づく活動の実施状況の見直し③国連システムの構造改革とプログラムの再編成――の三つの分野で改革案の検討を進めている。「可能な限り迅速に進める」(グテレス氏)として、検討内容の一部は秋に提出予定の2026年の修正予算案に盛り込まれる。詳細な検討が必要なものは27年予算案に反映する。国連の通常予算は国連総会(193カ国)が承認する。

 米国の対外援助見直しに伴う国連への影響は顕在化している。国連関連機関の国際移住機関(IOM)は3月、米国の資金提供の大幅減少を受け、本部の人員の2割にあたる250人の職員を削減すると発表した。新規雇用の凍結や出張制限を続けてきた国連人道問題調整事務所(OCHA)も4月に世界各地の職員2600人のうち500人を削減し、コロンビア、イラク、パキスタンなど9カ国での活動を縮小するとした。

 国連は加盟国に義務づけられた分担金と、政策に応じた各国の任意の拠出金を財源に活動する。分担金の割合は国民総所得(GNI)などを基に決まり、国別では最多の米国が上限の22%、2番目の中国がこれに迫る20・004%、3番目の日本は6・930%となっている。国連の集計によると、今月9日時点で今年の分担金をすべて支払っている国は、193加盟国のうち104カ国にとどまる。分担金の未納や支払いの遅延も国連財政の不確実性を高めている。【ニューヨーク八田浩輔】

毎日新聞

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