自民総務会、年金改革法案の提出了承 今国会の成立は見通せず

2025/05/13 11:26 

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 自民党は13日の総務会で、パートら短時間労働者の厚生年金の対象を広げる適用拡大などが盛り込まれた年金制度改革関連法案を了承した。政府は16日にも閣議決定し、今国会に提出する。ただ、自民党内の調整の過程で、就職氷河期世代以降を念頭に基礎年金を底上げする案を事実上削除したことに野党は反発している。与党は今国会での成立を目指しているが、見通しは立っていない。

 年金制度改革関連法案は今国会で、首相が質疑に出席する重要広範議案に指定されている。政府は当初、3月上旬の国会提出を目指していたが、今夏に参院選を控え、自民党内に負担増を含む内容が有権者からの批判につながるという根強い懸念があり、党内の調整に時間を要して予定から2カ月以上遅れた。

 ◇「基礎」底上げ案、骨格を削除

 その中で、比較的財政が安定している厚生年金の積立金の一部を基礎年金に振り分け、基礎年金の給付水準を3割底上げする案は骨格部分が削除された。

 国民年金受給者や基礎年金の割合が高い低賃金の厚生年金受給者らが将来的に低年金に陥ることを防ぐ目的があったが、基礎年金の半分は国の負担で将来的に巨額の国費が必要になり、「厚生年金の流用」との批判も根強かったためだ。これに対し、野党は「氷河期世代の年金を放置するかしないか国会が問われる」などと指摘し、審議を通じて法案に修正を求める方針だ。

 最終的に法案は、基礎年金底上げではなく、高齢者や女性の就労増などに対応する目的が柱となった。適用拡大は、現行で従業員51人以上の企業を対象にする企業規模要件を、2035年10月に撤廃するなどの内容。一定の給与がある高齢者の厚生年金を減額する「在職老齢年金」(在老)の見直しや、高所得者の厚生年金保険料の基準「標準報酬月額」の上限引き上げを盛り込んだ。

 また、次回改正に向けた検討として、国民年金の納付期間を5年延長して45年間にする案や、会社員らに扶養される配偶者が年金保険料を納めなくても基礎年金を受け取れる「第3号被保険者制度」の見直しを盛り込む方向だ。【宇多川はるか、寺原多恵子、高橋祐貴】

毎日新聞

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