イラン核施設、被害程度はどのぐらい? 内部で放射能汚染も

2025/06/15 17:30 

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 イスラエル軍が13日に始めたイラン国内への空爆で、核施設の被害状況が少しずつ明らかになってきた。イスラエルは核兵器の開発能力をそぐことを狙ったが、その目的はどの程度果たせたのか。

 イランの主要な核施設は、中部ナタンツやフォルドゥ、イスファハンなど各地に点在する。イランは核開発について「平和目的」だと主張しているが、核兵器保有国以外では唯一、核兵器級の濃縮度90%に迫る60%の高濃縮ウランを製造しており、保有量は5月時点で推定400キロ以上に及ぶ。これは、90%まで濃縮すれば核兵器9発分に相当する分量だ。

 13日の攻撃で主要な標的になったのは、ナタンツだった。地上と地下にそれぞれウラン濃縮施設があり、濃縮に用いる遠心分離機を最大5万基まで設置できる。

 地下の施設では、ウランの濃縮度を5%まで高める作業が行われており、1万基以上の分離機が稼働中だったとされる。一方、地上にあるのはパイロット濃縮施設(PFEP)で、新型の分離機の試験運用が行われ、濃縮度を60%まで高めるのに使われていた。ここでは数百基が稼働していたとみられる。

 イランメディアによると、イラン原子力庁は13日、ナタンツでの被害について「表面的な損傷」にとどまり、被害者もいなかったと述べた。ただ、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は13日、地上にあったPFEPが破壊され、電力を供給している施設や非常用電源も損壊したと明らかにした。

 地下にある濃縮施設については、「物理的な攻撃を受けたことを示すものはない」とする一方で、電源喪失により、設置されている遠心分離機がダメージを受けている可能性があると指摘した。

 今回の攻撃では、施設内で放射能汚染が起きたという。ただ、外部への放射能漏れはなく、グロッシ氏は「適切な措置を取れば管理できる」レベルだとしている。

 イランでは、フォルドゥのウラン濃縮施設や、ウラン転換施設などがあるイスファハンも標的になっている。

 米CNNによると、イラン原子力庁はいずれの施設についても「限定的な被害」にとどまったと述べた。ロイター通信も13日、フォルドゥやイスファハンでは「目に見える被害はない」との専門家の見方を伝えた。

 一方、IAEAは14日、イスファハンでは13日の攻撃で、ウラン転換施設を含む重要な建物4棟が損壊したと明らかにした。

 被害の程度などの詳細は不明だが、外部での放射線レベルの上昇は観測されていない。フォルドゥについては、被害は確認されていないとしている。

 核施設の多くは地下深くに建設されており、地中貫通弾などを使わなければ、空爆で直接被害を与えるのは難しいとされる。

 ただ、イスラエル軍は、イランに対する攻撃で多くの防空システムを破壊したとしている。現段階では、将来の攻撃に備え、周辺の防空システムの破壊に注力している可能性がある。【カイロ金子淳】

毎日新聞

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