イラン核施設の被害、国内でも見解割れる 核開発の「意思」は壊せず

2025/06/30 08:45 

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 米軍などの攻撃を受けたイランの核施設を巡り、イラン国内でもその被害規模についての見解が割れている。最高指導者ハメネイ師は「米国は重大な成果を上げていない」と語ったが、「深刻な被害があった」(アラグチ外相)との発言もある。ただ、いずれもウラン濃縮などを続ける姿勢は崩しておらず、イランの核開発に対する「意思」は破壊できなかったとみられる。

 「彼らは目的を達成できなかった。真実を隠すために誇張している」

 ハメネイ師は26日、停戦後初のテレビ演説で「もはや(ウラン)濃縮や原子力産業の問題ではない。イランが降伏するかどうかだ」と語り、米国に対抗する姿勢を改めて強調した。

 米軍は22日、中部フォルドゥなど3カ所の核施設を攻撃した。トランプ大統領は「核施設は完全に破壊された」と語ったが、被害は「限定的だった」との報道もある。ハメネイ師は被害の詳細には触れなかったが、影響は軽微だったとアピールした形だ。

 だが、イラン外務省のバガイ報道官は25日、中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」のインタビューに「核施設はひどい被害を受けた。間違いない。イスラエル軍と米軍に繰り返し攻撃を受けたからだ」と述べた。アラグチ氏も26日、国営テレビで、原子力庁が被害状況を調査するとしつつも、「被害のレベルは高い」と認めた。

 AP通信によると、フォルドゥの核施設を撮影した衛星画像では、空爆3日前の19日以降、ブルドーザーやトラックの出入りが確認されている。目的は不明だが、空爆前に高濃縮ウランなどを運び出した可能性もある。

 国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は28日、米CBSテレビのインタビューで、イランの核施設は「深刻な被害を受けたが、完全に破壊されてはいない」と語り、数カ月でウラン濃縮を再開できると指摘。高濃縮ウランの所在も把握していないと明らかにし、早期の査察再開を求めた。

 イランでは核施設の被害規模に対する見解は分かれているが、核開発を放棄するような発言は出ていない。

 バガイ氏はアルジャジーラのインタビューで、核の平和利用の権利について「イランはどんな状況下でも断固として保持する」と強調。イラン国会も25日、ウラン濃縮の権利などが認められない限り、IAEAとの協力を停止する法案を可決している。

 トランプ氏は、イランが警戒すべきレベルまでウラン濃縮を行えば、再び空爆すると明言している。だが、イランとしては、ウラン濃縮を放棄すれば米国に屈服した形となってしまう。仮に交渉が再開しても、合意は簡単ではなさそうだ。【カイロ金子淳】

毎日新聞

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