「ロシア軍が前線で化学兵器を使用」 ウクライナがOPCWへ調査要請

2025/07/09 20:34 

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 ロシアの侵攻を受けるウクライナ政府は8日、露軍が前線で化学兵器を使用したとして、国際機関・化学兵器禁止機関(OPCW、本部オランダ・ハーグ)に調査を要請した。オランダとドイツの情報機関が4日に「ロシアによる化学兵器の広範な使用の証拠を得た」と発表していた。

 OPCWでは、重要事項の決定には加盟国の一部で構成する執行理事会の承認が必要になる。OPCWのアリアス事務局長は「ロシアとウクライナの前線への監視を強める」との声明を執行理事会に提出。ウクライナの代表団を招き、本格調査をするかどうか加盟国と議論する方針だ。

 オランダとドイツの情報機関の調査によると、露軍は第一次世界大戦で使用された毒ガス「クロロピクリン」を含む化学兵器を使用。無人航空機(ドローン)からクロロピクリンなどをウクライナ軍のざんごうに投下し、兵士を外に追いやった後、射殺するなどしている。

 少なくともウクライナ兵3人が化学兵器の使用に関連して死亡し、2500人以上がウクライナの保健当局に化学物質による被害を訴えたという。オランダのブレケルマンス国防相はロイター通信に「数年間にわたり、露軍による化学兵器の使用が標準化され、広く拡大している傾向が観察されている」と述べた。

 ロシア側はこれまで一貫して化学兵器の使用を否定し、逆に「ウクライナ側が使用している」と批判している。ウクライナ側も使用を否定している。OPCWは両国の訴えについて、昨年の段階で「確証が得られていない」としていた。

 OPCWは化学兵器全廃を目指す化学兵器禁止条約の履行を監視、査察する機関で、条約にはロシア、ウクライナ、米国、日本など193カ国・地域が調印している。2011年に始まったシリア内戦での化学兵器使用疑惑を調査し、当時のアサド政権や過激派組織「イスラム国」(IS)が使用したと結論づけた。【ブリュッセル宮川裕章】

毎日新聞

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