合意急ぐトランプ氏「ウクライナの領土譲歩」「安全の保証」に転換か
ロシアのウクライナ侵攻を巡り、米国のトランプ大統領が15日の米露首脳会談を受けて、停戦に関する姿勢を転換し始めた。即時の停戦ではなく、包括的な和平合意を目指す意向を表明したほか、東部ドンバス地方(ルハンスク、ドネツク両州)からウクライナ軍を撤退させる案を支持している模様だ。いずれも露側が要求している。合意を急ぐトランプ氏が、プーチン露大統領の主張を受け入れた可能性がある。
一方で、トランプ氏は以前は消極的だった、ウクライナの「安全の保証」に米国が関与する意向も示唆し出した。ロシアが要求する「ドンバス地方のロシアへの割譲承認」と、ウクライナが求める「安全保障面での米国の関与」をセットにすることで、和平合意を目指すとの見方がある。
トランプ氏は、18日にワシントンで予定されるウクライナのゼレンスキー大統領との首脳会談で、これらの受諾を迫ることも考えられる。
トランプ氏は米アラスカ州で15日にあった米露首脳会談後の共同記者会見で、「進展があった」と強調したが、詳細は一切話さなかった。ただ、その後に、自身のソーシャルメディアで、会談前まで主張してきた時限的な「停戦」ではなく、包括的な「和平合意」を目指す意向を表明した。
英紙フィナンシャル・タイムズによると、プーチン氏は首脳会談で、露側が広域を占領するドンバス地方からウクライナ軍を完全に撤退させ、この地方の全域を「ロシアの領土」として認めるよう要求した。
ロシアは2022年9月にドンバス地方と南部ザポリージャ、ヘルソン両州の計4州を自国領に併合すると一方的に宣言した経緯がある。ただ、露軍は今も4州全域は占領していない。
露側は、ウクライナの撤兵などの見返りとして、南部を含むほかの地域では戦線を凍結し、支配地域拡大のための新たな攻撃も行わないという。トランプ氏は、ウクライナと欧州の首脳に対して、こうしたロシアの意向を伝えた。
米紙ニューヨーク・タイムズの報道では、プーチン氏はウクライナが露側の案を受け入れた場合には、ウクライナや欧州各国に侵攻しないと約束する文書を作成することも提案しているという。
トランプ氏は、ウクライナがかねて求めてきたロシアの再侵攻に備えた「安全の保証」への米国の関与にも言及し始めている。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、トランプ氏は首脳会談後に、欧州の首脳らに対して、米国が「安全の保証」を提供することに前向きな姿勢を示した。トランプ氏は軍事的な対外関与に消極的で、これまでは「欧州が担うべきだ」との立場だった。
トランプ氏は首脳会談後の15日の米FOXニュースで、プーチン氏とウクライナの領土問題や安全保障に関して交渉したと説明し、「大筋では合意できている」と主張した。その上で、最終的には「ゼレンスキー氏次第だ」と語っていた。
ウクライナにとっては、これまで死守してきた地域から軍を撤退させることや、ドンバス地方の割譲を認めることは容易ではない。だが、譲歩を示さない場合、トランプ米政権がウクライナに圧力をかける可能性もあり、難しい判断となりそうだ。
こうした中、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長や北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は17日、米・ウクライナの首脳会談に、他の欧州首脳と共に同席する意向を表明した。【ワシントン松井聡】
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