旧統一教会の韓総裁逮捕 捜査の端緒は尹前大統領夫妻のお抱え占師

2025/09/23 04:03 

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 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁(82)が、韓国の特別検察に政治資金法違反などの疑いで逮捕された。韓氏が捜査線上に浮かんだ端緒は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領夫妻と関係の深い占師だった。家宅捜索された占師の拠点では、日本に関係した意外な「ご神体」があったことも報じられている。

 「占師のチョン・ソンベ氏が大統領夫人への贈り物として、旧統一教会の元幹部からダイヤモンドのネックレスを受け取ったとみられる」

 今年4月下旬、韓国メディアでこうしたニュースが報じられ始めた。当時、チョン氏は別の政治資金法違反事件で逮捕されていた。押収された携帯電話の記録から、旧統一教会の元世界本部長、ユン・ヨンホ氏とのネックレスに関するやり取りが明らかになったという。

 韓国では伝統的に政治家が占師に相談することが少なくない。韓国メディアによると、チョン氏は尹氏や妻の金建希(キム・ゴンヒ)氏(53)と長年にわたり親交が深かった。金氏が代表を務める企業の顧問だったほか、尹氏が大統領選に出馬した際に一時、陣営幹部だったと報じられている。

 大手紙「中央日報」などによると、チョン氏の占いの拠点があるソウル市内の建物の2階(90・18平方メートル)には、仏像などのほか、日本の神話で天皇家の祖先とされる天照大神(あまてらすおおみかみ)の像がまつられているという。中央日報は室内の写真付きで報じた。

 チョン氏が発端となって旧統一教会に飛び火した事件は、6月の李在明(イ・ジェミョン)政権発足後、特別検察による捜査が本格化した。

 特別検察は、ユン氏が2022年4~8月、チョン氏を介して金氏側に英ブランド「グラフ」のダイヤモンドのネックレス(約640万円相当)や仏ブランド「シャネル」のブランドバッグ2個(計約210万円相当)などを贈ったとみて捜査。旧統一教会側には、22年5月に発足した尹政権から教団の事業で便宜を図ってもらう狙いや、民間テレビ局の買収で協力を求めた疑いなども出ている。

 韓氏の逮捕につながったのは、この教団元幹部のユン氏の供述だ。

 ユン氏は22年当時、教団の「ナンバー2」と目される実力者で、政界との窓口になっていたとみられる。任意の聴取に対し容疑を大筋で認め、さらに韓氏から承認を得て実行したと述べた。海外逃亡阻止のため、韓氏は出国禁止措置を受けた。特別検察はその後、ユン氏を請託禁止法違反罪などで、金氏をあっせん収財罪などで逮捕、起訴した。

 さらにユン氏は、尹前大統領の側近の権性東(クォン・ソンドン)・国会議員に22年1月、1億ウォン(約1060万円)を渡したと供述。権氏は政治資金法違反などの容疑で逮捕された。特別検察は、この件にも韓氏が関与したとみている。尹氏が当選した22年3月の大統領選で、教団側が尹氏を支援した疑いも浮上している。

 このほか、当時の与党「国民の力」の代表選(23年3月)に向け、教団の信者が集団入党した疑惑もある。代表選では一定の要件を満たした「責任党員」に投票権がある。【ソウル福岡静哉】

毎日新聞

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