王太后死去、黒服で喪に服すバンコク 観光客にも「敬意ある服装を」

2025/10/29 07:00 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 タイのシリキット王太后が今月24日に死去したことを受け、首都バンコクの街の表情が一変した。通行人や店員の多くが黒や白の服を身に着け、アパレル店の店頭には黒服が並ぶ。政府の公式サイトなども白黒基調に切り替わり、国内は深い哀悼ムードに包まれている。

 王太后はワチラロンコン国王の母で、バンコクの病院で血液感染症のため亡くなった。貧困地域を支援する王室のプロジェクトに尽力し、「国民の母」として敬愛を集めた。

 タイ政府は25日、服喪の期間を発表した。官公庁や学校は30日間、半旗を掲げる。公務員や国営企業の職員には、1年間の喪服や喪章の着用が求められた。一般国民にも90日間、黒か落ち着いた色の服を着るよう協力を呼びかけた。観光や娯楽関連のイベントは延期か、喪に配慮した形での実施が求められた。

 一方、政府観光庁は観光客向けに、「全ての観光名所、交通機関、レストランなどは営業している」と発信。その上で、寺院や王室関連施設を訪れる際にはタイ国民と同様、「敬意を表した服装」を心がけるよう求めた。

 ただ、SNS(交流サイト)などでは、主要産業である観光への影響を懸念する声も少なくない。2016年にプミポン前国王が死去した際、服喪期間中は観光客に人気の歓楽街が営業を停止した。イベントも中止が続き、バックパッカーの聖地として知られるカオサン通りでは予約キャンセルも相次いだ。宿泊客が約7割減少したと現地メディアで報じられた。

 今回も、11月から12月にかけて開催予定だったチャオプラヤ川沿いの花火大会の延期が発表されるなど、影響は出始めている。まもなく乾期に入り、観光のハイシーズンを迎える中、「観光や娯楽産業に関わる人たちは大きな損失を被る」「1日喪に服すだけで十分。イベントの準備には数カ月から数年かかる」という声もあり、先行きを不安視する声が広まっている。【バンコク国本愛】

毎日新聞

国際

国際一覧>