「ガソリンから台所まで」 中東衝突の余波、アフリカ経済を直撃

2026/03/07 10:39 

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 イランと米国、イスラエルの交戦激化の余波が、経済的に脆弱(ぜいじゃく)なアフリカ諸国に広がっている。輸入に依存する経済構造のため、中東情勢の緊迫が生活や財政に連鎖的な影響を及ぼす恐れがある。

 「攻撃拡大は世界のさらなる不安定化を招き、特にアフリカではエネルギー市場や食料安全保障に深刻な影響を及ぼしかねない」

 アフリカ連合(AU)のマハムド・アリ・ユスフ委員長は、2月28日付の声明でこう懸念を表明し、「平和は武力ではなく外交によってのみ実現される」と訴えた。

 戦闘の影響で湾岸諸国の石油やガス施設が操業停止に追い込まれ、イランの精鋭軍事組織・革命防衛隊はホルムズ海峡の封鎖を宣言した。ロイター通信によると、南アフリカのラマポーザ大統領は4日の国際会議で、アフリカでは既にサプライチェーン(供給網)の逼迫(ひっぱく)やエネルギー価格の上昇が起きていると指摘。「地政学的な情勢変化は、輸入に依存するアフリカ経済の弱さを浮き彫りにしている」と危機感を示した。

 西アフリカの産油国ナイジェリアでは、エネルギー価格の上昇が早くも市民生活に影響を及ぼし始めている。輸出額の約7割を原油に依存するが、精製設備が十分でなく、ガソリンなどの石油製品は輸入に頼らざるを得ない。原油価格の高騰が一時的に国家収入を押し上げる一方、市民は物価高の直撃を受けるというジレンマを抱える。

 地元メディアによると、家庭用に使われる液化石油ガスの価格は大幅に上昇しており、中東情勢の緊迫が「ガソリンスタンドから家庭のコンロまで直撃する」と報じている。

 一方、金融面への影響も懸念されている。南アフリカに本部を置くシンクタンク「安全保障研究所」(ISS)は、有事には安全資産として米ドルが買われ、アフリカ諸国が通貨安に直面する恐れがあると指摘。ドル建て債務の返済負担が膨らみ、ウクライナ紛争などで悪化した財政をさらに圧迫しかねないとしている。

 財政余力が限られる中、開発支出から資金を振り向けざるを得なくなり、社会不安や政治の混乱につながる恐れもある。ISSはまた、中東情勢の緊迫で欧州などに難民が流入すれば、開発援助の減少を通じてセーフティーネットが弱体化する可能性もあると指摘している。

 ナイジェリアでは、イランへの連帯を訴えるイスラム教シーア派住民による抗議デモも発生しており、中東情勢が宗教的緊張に波及する兆しもみられる。一方で政府は中立的立場を維持し、外交による解決の必要性を訴えている。【古川幸奈】

毎日新聞

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