台湾花蓮県・洪水から半年 被災した中学球児に届いた日台の支援

2026/03/23 16:18 

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 2025年9月に台風による洪水被害に見舞われた台湾東部・花蓮県で復興の動きが少しずつ進んでいる。濁流で野球道具が流された中学校には台湾各地から寄付が寄せられ、白球を追う子どもたちの声が戻った。ただ地元経済への負の影響は被災から半年を迎える今でも払拭(ふっしょく)できていない。

 3000メートル級の山々が連なる中央山脈を西に望む花蓮県光復郷。25年9月23日に台風18号による大雨で、山間部にできていたせき止め湖から大量の水があふれ出し、約1万人が暮らす町に押し寄せた。24人が死亡・行方不明になり、深刻な被害を受けた民家は約90棟にのぼる。

 「グラブやスパイク、ネットが流され、ブルペンや部室も壊れた。すべてを失って途方に暮れました」

 県立光復中学の教師で野球部顧問の杜恵美(とけいび)さん(50)は直後の惨状をこう振り返る。グラウンドは深さ1メートルほどの泥で埋まった。21人の野球部員にけがはなかったが、複数の部員の自宅では1階部分が水につかった。

 同中は台湾のプロ野球選手を数多く輩出する強豪。一方で地元での働き口は限られ、父母が出稼ぎを余儀なくされる生徒も少なくない。「家庭の状況を理解している子どもたちは先輩のようにスポーツで頑張らないといけないと考えています」(杜さん)。

 洪水から数日後、野球部員らはスコップを持ち、台湾各地から集まったボランティアらとともにガラスの破片や石が交じった泥をかき出し始めた。

 苦境を知った野球界、企業からは野球用品の寄付が相次いだ。スポーツメーカー「ミズノ」の台湾法人は同中をはじめ3校の野球部や陸上部などに対して、ウエアや靴など130万台湾ドル(約650万円)相当の商品を贈った。担当した黄彦愷(こうげんがい)さんは「子どもたちに早く元通りの練習に戻り、夢を追い続けてほしかった」と話す。

 2カ月後、野球部は本格的に練習を再開。ブルペンなど一部施設は使えないものの、試合にも出場できるようになった。黄訳皜(こうやくこう)選手(3年)は「野球用具をもらい、グラウンドに土が戻った時は本当にうれしかった。練習できなかった分を早く取り戻したい」と語った。

 一方で住民の生活は洪水の影響から抜け出せていない。約500ヘクタールの農地が厚い泥に覆われ、農作業を再開するメドがたたない状況だ。台湾メディアによると、製糖工場を利用した観光施設では来場者が激減している。

 こうした中、12月には300億台湾ドル(約1500億円)を上限とする復興特別予算が成立。洪水で堤防が決壊した河川の改修工事が進むほか、旅行促進のイベントが開催されている。ただ、今年2月に取材で訪れた町では泥や砂にまみれたまま放置されている建物が散見され、復興の進度はまだらな印象だ。県庁舎前では不満を募らせた被災者約500人による抗議活動も起きた。

 被災者支援団体のメンバー、クラスさんによると、作物を作れなくなった高齢の農民らが困窮する一方、家計を支えるために地元を離れる若者も出ている。「復興予算の大部分は河川改修など大規模工事にあてられ、住宅の再建や商店の再開を望む被災者にとっては十分な補助ではない」と訴えた。【花蓮県(台湾東部)で林哲平】

毎日新聞

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